出産を経て、コーポレートガバナンスとフィンテックなどの担当となり、併任で中長期的な政策の軸となる考え方を検討する「次官・若手プロジェクト」に参加し、『不安な個人、立ちすくむ国家』というリポートをまとめて書籍化しました。若手官僚の勉強会の走りだったと思っていますし、本はまったく売れませんでしたが、パワーポイント自体は150万ダウンロードという、経産省では歴史的、記録的なアクセスをいただきました。
世界経済フォーラムは、ダボス会議を主催するグローバルな国際機関と、船橋さんのAPIと、経済産業省の3者が対等な関係で作った組織です。国費に頼らず、パートナー企業にファンディングをお願いしているので、非常に機動的に運営ができています。
船橋:第四次産業革命の社会実装では、プラットフォーム、モバイル決済、あるいは5Gの分野でも、中国が先行しており、日本はどんどん遅れてしまうのではないかという危惧を感じますが、そこはどうお考えですか。
須賀:私は経産省でフィンテックなどベンチャー支援の政策の担当をしたこともありますが、その経験を踏まえると、一般的なベンチャー支援策は必要ないと思います。伸びるベンチャーは国に頼ることを考える暇もなく、フロンティアを切り開いていきます。
一方で、イノベーションが出てきているのはアメリカと中国だという事実があります。共通するのは、それに関して国が何もやっていないということです。けれど、日本が国として何もやらないというのはありえないので、政府が先を見通して、正しい政策を打ち出すことが重要だと思います。
単に規制緩和ということではなく、全体最適のために、強化すべきルールもあると思いますが、強化すべきところと口を出すべきではないところを正しく見極めて変わり身早く変化していく、本当の意味で賢い政府が必要とされています。それに気づくのに、例えば20年かかってしまったら手遅れです。
政治の役割を変える
船橋:それでは、最後になりましたが小林さんお願いいたします。
小林 史明(以下、小林):私は政治の役割もそろそろ変化したほうがいいと考えています。
これまでの政治モデルは、地元の要望をタスクとしてこなしていくというスタイルで、戦後からまったく変わっていません。役所にお願いして予算をつける。それがすべてです。もしくは、何かしらフワっとしたスローガンを考えて、あとは官僚があげてくる政策を頑張って実現するのが役割だったのだと思います。そんな政治が続いてきた中で、投票率が上がらない、人々が選挙に関心を持たない世の中になってしまいました。