お客の購買を驚くほど正確に促したAIの驚愕

人間の専門家が立てた策はほぼ動かなかった

人間の生の経済活動を科学的に解明するのは可能なのでしょうか(写真:Graphs/PIXTA)

あなたが、今日家族で郊外のショッピングモールに車で行くとしよう。買い物を終えて、モールから帰るときに、何にいくら使っているだろうか。それは何によって決まり、いつ決定されるのだろうか。

よく考えてみるとこれは極めて複雑な問題だ。あなたがこの一連の買い物のはじめから終わりまでに関わる人の数や種類、物品の数や種類、そして情報の数や種類、そして、これらに影響を受けて行った行動の数々を考えてみてほしい。膨大である。

そのどれが、購買に影響を与え、あるいは影響を与えていないかなど知ることはできない。本人だってわかるわけはない。今日買ったものの理由を聞けば人はもっともらしく説明するだろう。しかし、このような意識に残ったことは所詮後付けの理屈であることがほとんどだ。

人間の生の経済活動を科学的に解明するにはどうしたらいいか。拙著『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』でも解説している、私のグループで開発した社会・経済現象の計測技術を紹介しよう。

顧客や従業員の動きを統計化する技術

この技術は、実際の店舗での購買というプロセス全体を丸ごと計測するものだ。具体的な現場として、あるホームセンターの協力を得て、店舗における顧客や従業員の動きなどを計測しデータ収集を行った。その結果を解析して売り場にフィードバックすることで、売り上げの大幅向上という威力を発揮しはじめている。

計測に用いたのが、ウェアラブルな名札型のセンサーである。

簡単に言えば、顧客がどこに、どれだけの時間滞在し、どの店員といつどこで会話し、その会話でどんなパターンのやりとりが発生したか(ただし、会話の内容は記録されない)という情報を丸ごと収集した。

さらに、社員側では、それぞれの従業員が、いつどこの売り場にいたのか、バックヤードで入荷作業をしていたのか、さらに、従業員どうしでいつ誰と誰との間にどんなパターンのやりとりがあったのかなどが収集される。

次ページセンサーはどこまでデータ収集できるのか?
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