富士フイルムは「倒産のコダック」に勝ったのか

日米の「イノベーションの効率」を問い直す

日本企業の成長戦略は、はたして本当に適しているものなのでしょうか(写真:metamorworks/iStock)
デジタル化への対応が遅れ、2012年に倒産したアメリカのコダック社。一方、ライバル企業の富士フイルムは、ヘルスケアや化粧品などへ事業の転換を進め、いまも日本のトップ企業として活躍している。そのため「富士フイルムが勝ち、コダックは負けた」と考えるのが当然に思えるが、「はたして本当にそうなのか?」と疑問を投げかけたのが経営学者の清水洋・早稲田大学教授だ。清水氏の新著『野生化するイノベーション』から、その議論を追ってみよう。

「イノベーターのジレンマ」に陥ったコダック

有名な話ですが、世界で初めてデジタルカメラを発明したのは、コダックの技術者スティーブン・サッソン氏だと言われています。1975年のことです。しかし、フィルム事業で世界のトップを走っていたコダックは、デジタルカメラを他社に先駆けて本格的に事業化することはありませんでした。技術力はあるのに、それを利用しなかったのです。

このエピソードは、「リーダー企業が自社の強みを破壊するようなイノベーションに消極的になり、他社のイノベーションによってその競争力を大きく低下させてしまう」という「イノベーターのジレンマ」の典型例として、よく紹介されます。

当時、日本では「富士フイルムが組織の力で勝ち、コダックは負けた」という旨の報道が多くなされました。しかし、本当にそう言えるのでしょうか――。もちろん、企業単位で考えると、富士フイルムは生き残り、コダックは倒産したわけですから、富士フイルムが勝ったといえるでしょう。

しかし、もう少し視点を上げてみると、それほど単純な話でもないと考えられます。

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