いち早く「両利き」にならないと生き残れない 「日本的経営」がすでにオワコンになった理由
業界チャンピオンに死角あり
入山:どの企業にもイノベーションが求められるこれからの時代は、既存事業を深掘りして収益を稼ぐ「深化」と、不確実性は高くても新しい領域を切り開く「探索」を、まさに左手と右手が同時に使えるようにできる「両利きの経営」が欠かせません。多くの日本企業は「深化」だけ得意で、「探索」が非常に苦手な印象です。
しかし、「両利き」の重要性は世界中の経営学者が支持することであり、だからこそ世界的な第一人者であるチャールズ・オライリー(スタンフォード大学経営大学院教授)とマイケル・タッシュマン(ハーバード・ビジネス・スクール教授)の共著『両利きの経営』が、冨山さんと私の解説で日本でも上梓されたわけです。
冨山さんはこの本の著者の1人であるオライリー教授と親交があると聞きます。どのようなきっかけで知り合ったのでしょうか。
冨山:私がカリフォルニア大学サンディエゴ校の教育プログラムに招かれたときに、同校教授で日本研究者のウリケ・シェーデさんと仲良くなったのですが、彼女の夫がオライリーさんでした。
彼は、なぜ産業構造の転換期にチャンピオンが退場することが繰り返されるのかに興味を持っていて、日本の状況を聞かせてほしいと頼まれたのです。
入山:冨山さんが産業再生機構時代に再建の対象となったカネボウやダイエーも、かつては業界チャンピオンでしたね。オライリーさんには、どのように説明をしたのですか。