いち早く「両利き」にならないと生き残れない

「日本的経営」がすでにオワコンになった理由

入山:企業は基本OSまで変え続ける必要がある、と。そうすると、その持続性を担保するうえで懸念されるのが、日本の大企業の場合、経営者の任期が非常に短いことだと思うのです。

冨山:最悪なのは、短いことに加えて、定期的に4年で交替する場合です。トップの在任期間がわかっていると、抵抗勢力も時間のゲームができてしまう。巨大組織になると、社長に就任しても、初日から掌握はできず、1、2年はかかります。最後の年は影響力のないレームダックになるので、まともに仕事できるのは4年間のうちの1年くらい。変革を妨げる側は、あと1年も耐えれば、変革モードが落ち着き、織田信長のような君主が消えるので、とりあえず面従腹背でやっておこうとなる。

これに対して、信長が何年生きるかわからない、10年続くかもしれないと思えば、抵抗勢力も改宗するか、抵抗を続けるかと考えざるをえなくなります。さらに10年後にも、変革推進派が新たにトップになる可能性だってある。

入山:なるほど! 長期政権なだけでなく、「いつ辞めるかわからない」ことが大事というのは、すごく面白いし、示唆に富みますね。ところで、京都産業大学の沈政郁教授がカナダのアルバータ大学の研究者と一緒に、過去40年の日本の一部上場企業のデータを統計分析したところ、利益率も成長率も高いのは、明らかに同族企業だったのです。

冨山さんがおっしゃるように、判で押したように2年2期でやる会社は、実は統計的に見てもパフォーマンスが悪い。一方、ファミリービジネスにはトップが長く在任するので長期視点になり、結果として知の探索ができるというのが、私の理解です。

冨山:そうだと思いますよ。ファミリービジネスや、サラリーマン会社でも事実上オーナー的な経営者が長年君臨しているほうが、デジタル・トランスフォーメーションや両利きへの変革を持続できる。

逆に、ファミリービジネスのリスクは、とんちんかんな人が後を継ぐと、突然ダメになること。言い換えると、そこさえ克服できればいい。イノベーション時代の経営には、ずば抜けて強い、有能なリーダーシップと同時に、暴走したり、衰えたりしたら交替させる安全弁も必要で、そこは取締役会なりが機能すべきところでしょう。

トップがコミットして異質のものを取り込め

入山:では、ここまでの話を受けて、冨山さんからご覧になって、両利きの経営に適応できていると思う経営者はいらっしゃいますか。

冨山:富士フイルムホールディングスの古森重隆さんは、少なくともフィルムに関しては破壊的な波を乗り越えられています。あとは、コマツの坂根正弘さんと野路國夫さん。ダントツ経営で既存事業の選択と集中を行い、オープンイノベーションで、シリコンバレー経由でいろいろなベンチャーの種を拾ってきて、コムトラックスなどのように真剣勝負でモノにし、まさに両利き経営をやっていますね。

それからコマツのトップ層は、部下をシリコンバレーに派遣して調べさせるのではなく、自分で現地に行き、そのまますぐ即決する。だから、向こうも本気になりますよね。破壊的イノベーションや探索の領域は、従来とは異質のものを取り込むので、そこにトップがコミットすることが大切なのではないでしょうか。

(構成:渡部典子)

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