いま日本企業に必要なのは「二兎を追う戦略」だ 「深化+探索」を繰り返して成長したアマゾン

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「両利きの経営」に不可欠な要素とは何でしょうか(写真:elenabs/iStock)
経営学、とりわけイノベーション論の分野で知られている、「両利きの経営」という言葉が、最近、広くビジネスパーソンの間でも多く語られるようになった。この研究の第一人者であるチャールズ・オライリー(スタンフォード大学教授)とマイケル・タッシュマン(ハーバード大学教授)の著作『両利きの経営――「二兎を追う戦略」が未来を切り拓く』が話題になっている。
今回は、デジタル化への対応戦略、ビジネスモデル研究の第一人者で早稲田大学ビジネススクールの看板教授の1人でもある根来龍之氏が、「両利きの経営」のポイントと、ここから日本企業がデジタル化対応のためにとるべき戦略について解説する。

「両利きの経営」はここが新しい

「両利き」とは、「深化」と「探索」の企業活動を同時に行うことである。深化とは「既存事業の進化を担う活動」であり、探索とは「新規事業を創発する活動」のことだ。この理論の特徴は、「活動」というプロセスに着目するところである。新事業の種類(例:資源関連型多角化)に着目してきた伝統的な多角化論とは示唆することが異なる。

『両利きの経営――「二兎を追う戦略」が未来を切り拓く』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

この「両利き(ambidexterity)」という言葉を経営学の世界で最初に使ったのは、ノースウエスタン大学教授(当時)のロバート・ダンカンである。1976年に『組織デザインの論文集』に発表した論文で、イノベーションの端緒を見つける活動とイノベーションを実現する活動の両方を促すためには、組織はそれぞれに特化した2つの構造を持つ必要があると論じた。

一方、深化(exploitation)と探索(exploration)という言葉を対比させて最初に使ったのは、スタンフォード大学教授(当時)のジェームズ・マーチである。1991年に『オーガニゼーション・サイエンス』誌に発表した論文で、深化を「洗練化、効率化、選択、実行」にかかわる企業活動、探索を「サーチ、変異、実験、イノベーション」にかかわる企業活動と定義した。2つの活動は、組織内で異なる能力を必要とし、組織の資源の配分を競う「相互に対立する活動」とされた。

探索は、時間を無駄に使う傾向があり、成果がより不確実であり、成果が出るまでに時間がかかる。これ対して深化は、より効率的で、成果がより確実であり、成果がよりすぐに出る。前者は企業の長期的成果に、後者は企業の短期的成果にかかわる。経営者は、組織が持つ有限の資金や人的資源などをそれぞれの活動にどれだけ使うか、バランスを考えなければならないとされたのである。

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