いま日本企業に必要なのは「二兎を追う戦略」だ 「深化+探索」を繰り返して成長したアマゾン

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オライリーとタッシュマンによれば、書籍販売から幅広い商品へ、自社製品の販売からほかの小売業者の仲介サービス(オンライン・プラットフォーム)へ、倉庫からフルフィルメント(受注・決済・配送)センターヘ、流通サービスからクラウド・コンピューティングへ、そして、動画配信・コンテンツ制作へと同社の事業が増殖していった背後には、「両利きのリーダーシップと両利きの組織のストーリー」があるという。

葛藤を許容する能力と、破壊的変化を追求し続ける勇気

アマゾンのリーダーたちは、「効率性や漸進型改善が重視される小売りや物流などの成熟事業を深化する」と同時に、既存の資産や組織能力を基にしながら、それに新たな資源を加え、「柔軟性と実験が第一に求められる新領域の探索」を行い続けている。

1994年に創業したアマゾンは、ネット書店(小売り)から出発したが、2000年には書籍以外の商品も扱うオンライン・スーパーストアへと進化した(第1フェーズ)。

2000年代に入ってアマゾンは、自社が仕入れた商品を販売するだけでなく、ほかの小売業者がそれぞれの商品を販売できるオンライン・プラットフォーム(eマーケットプレイス)を提供するようになった(第2フェーズ)。

2006年以降のアマゾンは、独自の商品検索エンジン、広告サービス、AIなどのソフトウェア開発を進めた。2006年にはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の提供を始め、クラウドコンピュータ事業を始めた。さらに、2007年にはキンドルを発売し、消費財(ハード)の提供企業ともなっていく(第3フェーズ)。

ここで、注意しなければならないことは、探索の結果として始めた事業は、次には深化の対象となることだ。書店としてのアマゾンは、「数量の増加に対応して倉庫を建設」し、本以外の商品へと商品範囲を拡大する過程で「幅広い商品のフルフィルメントに向けたより高度な技術」を蓄積していくことで、小売業・EC企業としてのオペレーションのレベルを上げていった(深化の活動)。

その能力を前提に「アマゾン・プライム」サービスを始め、さらに自社のシステム開発能力の上に社外への提供に必要な能力を構築し、「クラウドコンピュータ事業」を始めた(探索の活動)。同社の発展のストーリーは、既存の組織能力と市場を深化しつつ、新しい組織能力や市場を開拓してきた歴史なのだ。

これらが可能だったのは、「アマゾンのリーダーシップには、深化と探索を同時に行うときに生じる組織内の葛藤を許容する能力と、破壊的変化を追求し続ける勇気」があったからだ、とオライリーとタッシュマンは指摘する。このような成長が可能だったのは、「両利きのリーダー」がいたからだというのだ。

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