志はあるけど、お金はない。どうしようと途方にくれかけたとき、講演の依頼があった。そこでひととおりの話をした後、恥をかなぐり捨てて「誰か助けてください!」と叫ぶと、終了後に納棺師の人が話しかけてきた。
「あなた納棺師になれば?って言われたんです。収入にもなるし、元受刑者をその道のプロに育てていくこともできるからと。そもそも納棺師は、非行歴がある方が向いているそうで。度胸があるし、人も痛みもわかるから、とその方は言うんです。すぐ飛びつきましたね」
その方のもとでしばらく修業を積んだ後、納棺師として独り立ちした三宅さん。まだまだ人に教えられる身ではないけれど、納棺師になりたいという元受刑者がいればいつか育てたい、ともう1つの展望をしみじみ語った。
NPOでなく株式会社にしたワケ
三宅さんの前例の少ない取り組みは、多くのメディアで取り上げられるなど、注目を集めている。しかし、元受刑者へ向けられる世間からの視線は、決してポジティブではないと感じている。
入社してもすぐに飛ぶ(逃げる)のでは、暴力沙汰など起こさないか……というイメージだ。もちろん致し方ないことだが、一般的な企業の採用でも、社員がすぐに辞めたり、トラブルを起こしたりすることは普通にあるのでは、と三宅さん。
「日本は今後も人手不足が続いていくでしょう。犯罪歴の有無にかかわらず、どんな人でも育てていける体制が、これからの企業にとって必要ではないかと思うんです」
国が掲げる働き方改革では、外国人や高齢者、主婦(夫)などの活用に目が向けられがちだが、そのなかに「元受刑者」が含まれていてもおかしくない。むしろ日本のために、彼ら彼女らの教育や活用は欠かせないのでは、とすら思っている。
「だからこそ、こちらも元受刑者だからといって、『お願いします、雇ってください』とひたすら頭を下げるのは違うのではないかと思っているんです。受け入れた企業の教育次第では、大きな戦力になって活躍してくれるかもしれません。雇ってもらったことに恩義を感じて一生懸命に働き、社長の右腕になる方もいます。雇用してみなければわからないのは、一般的な求人と同じだと思うんです」
NPOではなく株式会社として設立したのも、『Chance!!』の必要性や存在意義を確信しているから。
そして、前例が少ないこの分野で活路を見いだせれば、元受刑者たちに勇気を与えられるからだ。事業が回っていく仕組みさえ構築すれば、いつか三宅さんが事業を離れても、『Chance!!』を継続していくこともできる。助成金や賛助金に頼らずとも、きっと実現させてみせます、と三宅さんは力強く口にした。
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