「元受刑者専用」の求人情報誌が生まれた理由 「非行歴・犯行歴」を持ちながら生きていく

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「『Chance!!』の履歴書は、犯罪歴とか事件を起こしたきっかけとか、腹をくくらないと書けない項目がたくさんあるんです。書くのに1週間かかった、という人もいます。空欄の箇所も、本人の気持ちを物語っているんですよね。それも含め向き合う覚悟を持って、受け入れてくれる会社とつなげたいんです」

株式会社ヒューマン・コメディ代表、および『Chance!!』の創刊を手がけた三宅晶子さん(撮影:尾形文繁)

実際に掲載する仕事も、どんな内容か理解したうえで載せたい――。そう考えた三宅さんはあるとき、前出の解体業の社長にお願いし、現場作業を10日間ほど体験したことがある。

現場は想像以上に過酷だった。民家の2階で作業をしていたら、床が抜けて転落しかけた。足場を伝ってビルの上層階に上ったものの、足がすくんで降りられなくなった。3メートルはある鉄パイプをかついで運ぼうとしたが、まともに持てなかった。「本当にしんどかった、もうやりたくないと思いました」と当時を振り返る三宅さんだが、同時に大きな気づきもあったという。

「求人を掲載してくださる企業には、建設系が多くあります。建設業界は基本的に、一生懸命働いてくれれば過去は関係ない、と考える会社も多いんです。大変ありがたいですが、それでも、人には向き不向きがあるし、無理をして働いても続きません。できればいろいろな選択肢のなかから、自分に合った仕事を選べたらいい」

そうして、現在は建設業に限らず、あらゆる業種・職種の求人を掲載するように努めているという。

三宅さんのもうひとつの顔

ところで気になるのは、『Chance!!』の収支状況についてだ。聞くと、三宅さんは「まだそんなに儲かってはいないですね」と即答する。

収入は基本的に企業からの広告掲載料。経費として制作費や印刷費、配送料、スタッフの給料などがかかる。黒字化はしているものの、三宅さん自身は会社から報酬を受け取っていない状況だという。

では、どのように収入を得ているのか。実は三宅さんは、納棺師としての顔も持っている。『Chance!!』を創刊する少し前に始め、現在まで続けているそうだ。

「まだ事業を始めたばかりの2015年に、新規事業についてプレゼンする、ある大会に参加しました。ここで目立って、出資してくれる方が現れないかな、なんて期待して。そうして元受刑者の就労支援をしたいというお話をしたら、なんと、大賞をいただけたんです。でも、出資しようという方は、誰もいなかった(笑)。太平洋に木の小舟で送り出されたような気持ちになりました」

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