当時、母親は病気で入院中。退学の報告をするため、父と一緒に病院を訪ねた。ベッドのうえの母は、娘の言葉を受けて涙を流した。その帰り道、三宅さんは人生の折れ線グラフが見えたという。
「自分の人生がすごく落ちていると実感しましたね。右肩下がりに、ストーンって。でも同時に、この経験をいつか必ずネタにしようと思って、将来自分が講演をしたり、本を執筆したりする姿をイメージしたんです」
時を経て現在。三宅さんは講演を行うこともあれば、出版社から書籍のオファーも来ているという。どん底のなかで思い描いた未来が、まさに実現したのだ。人生はイメージしたとおりになる、それを元受刑者たちに伝えていきたいです、と三宅さんは続ける。
「すべての人間は、過去を価値に変えることができる」
さらには社会のなかで、元受刑者の人々へのイメージが変わることも願っている。人は誰でも、一歩間違えば加害者になる可能性がある(三宅さんも最近、30キロ制限の道路を運転中、31キロオーバーのスピード違反で捕まったという)。些細なことがきっかけで法を犯してしまうことは、誰しも起こりうる。「善」「悪」と区別されている世界も実は表裏一体であり、誰でも悪とされる側に認定されるかもしれない。そういった目線を多くの人が持てば、差別や生きづらさのない社会になっていくのでは、と三宅さんは語る。
「多くの雇用のきっかけをつくることで、過ちを犯した彼ら彼女らが、今度は社会に貢献する実績ができると思っています。今後、『Chance!!』が当たり前のように受け入れられていく社会になることを願っています」
社名のヒューマン・コメディは、父から贈られた小説のタイトルが由来だ。同時に、「すべての人間は、過去を価値に変えることができる」「間違いを犯したとしても、そこから人の役に立つことをして、最期に笑って死ねたら、それも喜劇」という思いが込められている。
笑いあり、涙ありの一人ひとりの壮大な物語。三宅さんだからこそ発信できる、唯一無二のメッセージがそこにある。
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