「花そのものの姿を生かしたデザインが好きです。花と対話をしながら活けている感じがする。そういうとき、幸せそうな顔をしてるって言われます」
高橋エリさん(仮名・40代)。フラワーデザインに関する資格を持ち、長年、国内外で花に関する仕事に携わってきた。彼女は10代半ばで、監禁と集団強姦の被害に遭っている。
高校生のときに遭った拉致監禁
人生で何度か、忘れられない瞬間があるとエリさんは言う。1つ目は、高校生のとき。春休みが明けて登校し、仲の良い友人たちと、いつもと同じように雑談をしていた。あの先輩がかっこいいという、たわいもない会話。その瞬間、自分だけがエレベーターでストンと落ちていくような強烈な感覚を覚えた。
「私はもう、みんなとは違う。私はもう、この場所にいられない」
幼い頃に父が亡くなり、母は働きながらエリさんや姉妹を育てた。「手に職を」と、子どもたちを大学や専門学校に通わせてくれた一方で、エリさんが10代になると、恋人のできた母は家にあまり帰らなくなった。姉妹の一人は荒れて引きこもり、食器を投げる。家具や壁をボロボロにする。帰宅してから、ぐちゃぐちゃになった室内を片付けるのがエリさんの日常だった。
居場所がない。そう感じて、春休みにほかの街に住む先輩を頼って家出をした。駅で先輩を待っていたそのとき、若い男の集団に拉致された。車内でシンナーを吸わされ、その後の記憶は朦朧としている。男たちはエリさんが駅で缶のココアを飲んでいたのを見て、シンナーを吸っていたと勘違いしたらしい。「なんだシンナーじゃなかったのかよ、じゃあ吸えよ」、そんな会話だけ覚えている。
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