父兄から虐待受けた彼女が「40年後に得た希望」

被害者を縛りつける「記憶」と「その後の人生」

長い間、「性虐待の記憶」に悩まされ続けた、けいこさん。彼女は「今」何を思う?(写真:AH86/iStock)
性暴力の被害者を、被害から生き抜いた人という意味を込めて「サバイバー」と呼ぶ。被害を受けた過去だけがサバイバーの人生ではない。その後、彼女ら彼らはどんなふうに生きているのか。それぞれの今を追う。
(編集部注)本文内に「性虐待(性暴力)」に関する記述があります。

「12歳のとき、クラスメイトの男子3人から性的な虐めを受けました。でも私にとって、そんなことは大したことではない、自分で何とかできる問題でした。本当の苦しみはもっと醜いものでした」

この連載の記事一覧はこちら

けいこさんが治療の一環で書いた手記には、そうつづられている。「もっと醜いもの」とは、実父と実兄からの性虐待。彼女は、さまざまな性虐待を3歳から10代半ばまで受け続けた。

<けいこさんの記憶>

一等地の隠れ家レストラン。けいこさんが夫と2人で開いた店は、雑誌で紹介されるとしたらそんな表現になる。10代の頃に飲食のアルバイトで出会った夫と、いつか店を持つ夢を語り合ってきた。貯金をため、念願のオープンにこぎ着けたのは、30代に入った頃。

彼女を苦しめる「幼少期の記憶」

オープンから数年間はプレッシャーの連続だった。深夜2時に寝て早朝に目が覚める毎日を繰り返しているうちに、客から「顔色が悪い」と指摘されるようになった。

休めば治るかと思ったが、そうでもない。処方された睡眠薬を飲んでも眠れない。そのうちに血尿が出始めて、薬をのむのをやめた。漠然と「治らないかな」と思い始めた頃に、心療内科医が登場するドラマを見て、大量の涙が出た。「いつか、こういう診療を受けたい」と思った。

幼少期からの性虐待。心のどこかでは、その問題に向き合わなければいけないと気づいていたと、けいこさんは言う。

「ずっと考えたくなくて、楽しく生きたい、楽しく生きなきゃ負けと思って生きてきた。夢を叶えるためにがむしゃらに頑張ってもきた。でも夢が叶っても、いつもさみしくてつらくて消えたいという気持ち。この気持ちには終わりがないのかもしれない、走り続けなきゃいけないのかなと思ったらどっと疲れが出て……」

次ページ父と兄から受けた性虐待の記憶
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
トレンドライブラリーAD
人気の動画
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
銀行員の出世コースに見られ始めた大きな変化
銀行員の出世コースに見られ始めた大きな変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
日本企業は米中の板挟み<br>全解明 経済安保

先端技術をめぐる米中の争いは日本に大きな影響をもたらします。海外からの投資は経済を活性化させる一方、自国の重要技術やデータが流出し安保上のリスクになる可能性も。分断の時代に日本企業が取るべき進路を探ります。

東洋経済education×ICT