10代半ばで凄惨な性暴力に遭った彼女の告白 時間はかかっても癒やされる日は必ず来る

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「私はたまたま性被害について話せて、カウンセラーもそこを拾ってくれたからよかった。でも同じ病棟にいた女性の中には身内からの性虐待の過去があり自死してしまった人もいました。入院中の雑談で、性被害の経験を話す人は多かったです。でも本人が『大したことじゃない』と思おうとしていたり、カウンセリングでも性暴力よりも家庭環境が原因だとされていたり。精神医療の現場でも、性暴力がクローズアップしてケアされていないことがある。それが不思議でした」

最後の自殺未遂と変化

ある年の春。今度こそ確実に死のうと思い、入念に計画して薬を飲んだ。でもやっぱり、死ねなかった。3日後病院で目が覚めると、病室の床には寝袋にくるまった母の姿。

後から聞いた話では、母は医師から「もうこのまま目が覚めないか、後遺症が残るかのどちらか」と告げられていたという。でもエリさんは生き残った。

「母の姿を見て、そこで吹っ切れたんです。これだけやっても死ねないんだから、生きるしかないんだなって。それからは、主治医の指示もありそれまで処方されていた睡眠薬などを飲むのもやめました。離脱症状で10キロぐらいやせたけれど」

それからしばらくして、性被害に遭った人の話を聞く支援員になるための講座に申し込んだ。20代の頃は、頑なに避けてきた性暴力の話題。30代で通院するようになってからは、ネット検索をして支援団体のHPをのぞくこともあった。そして40代に近づく頃、この問題に自分からかかわっていくことを選んだ。

被害直後の人の話を聞くことに不安もあったが、講師は「あなた自身にとっても癒やしになるといいね」と背中を押してくれた。講座終了後、問題を1つクリアしたような気持ちになった。

退院後も、EMDR(※2)による治療やメールでのカウンセリングを続けてきた。40代になってからは通信大学で教育学を学び保育士資格も取得した。今はフラワーデザインの仕事と並行しながら非常勤で働いている。「子どもができないなら、仕事にすればいい」と、チャレンジすることにしたのだ。

※2 眼球運動を利用することでPTSDのケアを行う心理療法
次ページ力を奪われてしまったと思っていた
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