中高生の1割が「自傷経験有」という日本の実情 大人には何ができるのか
子どもが恐れているのは、自傷の事実を親が知ることではありません。知ったとき、親がどういう反応をするのかを恐れているのです。
ですから、「親が知ったら、どうなると思う?」と子どもに聞き、子どもがいちばん恐れていることは何かを見定め、それに対する手立てをきちんと打つことを子どもに示してあげること。
その信頼関係のなかで対応にあたっていただきたいと思います。
2大NGワード
子どもが恐れている親の反応は大きく分けてふたつ。ひとつは「過剰な反応」です。「なんてバカなことをするんだ」と叱りつけたり、ビンタをしたりというものです。
しかし、もっとも多いのは、親が自責するパターンです。自身の子育てに後ろめたさがある場合、「やっぱり私が悪かったんだ」と自分を責めてしまう親がいます。
しかし、それがかえって子どもを追いつめます。
子どもからしてみれば、学校でイヤなことがあったとしても「親に苦労をかけたくない」という一心で、でもどうにもならないという葛藤のなか、自傷することで生き延びているわけですから、親が自分を責める場面などに直面した場合、子どもは激昂するわけです。
子どもが恐れるもうひとつの反応、それは「過小な反応」です。わが子が自傷行為をしていると知ったら、ふつうの親は慌てます。
しかし、診察していると、「うすうす気づいていました」なんてことを言う親もいます。その横で、子どもは開いた口がふさがらない、という顔をしているのです。
私たちが気づいている子どもの自傷行為は氷山の一角だというお話をしましたが、子どもはなぜ第三者に相談したがらないのでしょうか。
多くの子どもたちは「誰かのマネと誤解されるのがイヤだから」「関心を引こうとしているだけだと思われたくないから」と言います。
言い換えれば、この2つは、自傷行為をする子どもに絶対言ってはいけないNGワードだということです。それを大好きな親から言われたらどんな気持ちになるか、想像していただきたいのです。
これもよく誤解されてしまうことなんですが、自傷行為は誰かのマネや関心を引くためのものではありません。その子なりに戦ってきたなかで出てきた行動なわけです。