旧共産圏の撮影に圧倒的な情熱注ぐ彼女の稼業 会社で働きながら自腹で海外に通い詰める

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旧共産圏は旧ソビエト連邦に対し、強い負の感情を持っている人が多かった。

星野さんが「ソビエトが好きだ」と言っていると、強くバッシングをされたことがあった。あくまで「ソビエト時代のデザインが好きだ」と言わないと、誤解を生む可能性があるのだと学んだ。

「私はそれくらいの被害にしかあっていませんけど、人によってはひったくりにあった、暴行された、というのは聞く話です。“おそロシア”という言葉もあるくらいですから、自己責任で気をつけなければいけません」

現在星野さんは、某企業のデザイナーとして働いている。会社では、それほど休みを取って、とがめられたりしないのだろうか?

「働いている会社はわりと自由は利く会社ですね。海外に行ってきました、と言っても周りの反応は『ふーんそうなんだ』くらいの感じです。

知り合いの中にはたまに『そんなに休んで!!』と驚いたり、とがめたりする人もいます。でも、みんなもっと休んだらいいと思いますよ。もちろん仕事はちゃんとしなければいけないですけど、でもそのうえで休んで好きなことをするのは自由ですよね。日本人はちょっとまじめに働きすぎだと思います。

うちの会社にも『愛社精神がとても強い人』がいます。『仕事が人生のすべてだ』っていう人もいます。でも、そういう感覚、私にはよくわからないんですよね。『ああ、違う宗教の人だな』と思うようにしています。

あと無計画で放蕩生活をしているようですが、何かあったときに大丈夫なように、ちゃっかり貯金はしていますね」

“アマチュアだからこそ”達成できた功績

彼女は今までに4冊の写真集を出版した。そして、ウェブや雑誌に写真を掲載して原稿料をもらうことも多い。

ただし、それらで稼いだお金で、撮影旅行でかかったお金以上に稼げているかというとそんなことはない。だから、彼女は厳密にはプロフェッショナルとは呼べないかもしれない。

ただ、彼女の作品に意味がないか?というと、もちろんそんなことはない。芸術性はもちろん、これまでなかなか見ることができなかった旧共産圏の様子を紹介したという功績はとても大きいと思う。

むしろそれは“アマチュアだからこそ”達成できた功績だと思う。いわば、星野さんはスーパーアマチュアというべき存在だ。

最後に星野さんにこれからも、旧共産圏への取材をするのかをうかがった。

「もちろん、まだまだ行きたい場所はたくさんあります!! 今は年に45~50日は海外に行ってるんですけど、これからもガンガン行きたいと思っていますよ」

星野さんは屈託なく笑いながら答えた。

このブレのなさが彼女の強みなのだな、と実感した。

【2019年9月19日9時40分追記】初出時、使用写真のクレジットが誤っていたので修正しました。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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