山口絵理子が24→38歳の苦闘で掴んだ経営哲学

マザーハウスが社会貢献しながら成長する理由

“ローカルの力”というのは日本も含めて、職人技術のある手仕事の「伝統工芸」である。

手作りのため大量生産は難しく、単価はとても高い。そしてなじみのない人に届くかということと、後継者不足が問題である。先細りゆく伝統工芸がありながら、どんなにすばらしい技術があっても、持続可能が困難であることが現実だ。

現在マザーハウスでは、マトリゴールというバングラデシュの工場で、250人ものスタッフが月産1万個のバッグを生産している。それは現地ではバッグ産業だと5本の指に入る規模だという。他工場との違いは何と言っても、「現地の素材と手作り」ということだ。

ライン生産で1万個というのは実現するのは簡単だが、手作りで1万個となると、それはもう計り知れない。

現地の人には気づけないその土地の生産物に価値を与える。これが山口の目指していた「ローカルの力を使いながら経済的自立をする」ということではないだろうか(撮影:梅谷 秀司)

「かつてのバングラデシュでは、モノづくりはコピー文化でした。中国と同じ“ある程度”の品質のものを、いかに安く作れるかが勝負だったのです。しかし現在の自社工場では、現地生産者のモノづくり意識が変わってきたのを感じています。

私が毎シーズンの商品開発を進めていくことにより、徐々に『モノを作るのは、ゼロからコンセプトから作るんだ』という、“コピー”ではなく“オリジナル”のモノを作るという意識を持つようになったのです。

例えば『今回は“夜空”というイメージでバッグを作ろう』とテーマを立てて、思考をめぐらせるなど、デザインはクリエイティブな作業であり、『創造する力は、工場の1つの武器である』ということを感じ取ってもらえるようになりました。このように、目には見えない変化を感じています。

私は大量生産の工場から資源関係のノウハウや、効率性などのいろんなインプットをもらったのですが、それを人間の手を生かすために使ったらどうなるのかということを、自社工場で実験してきました。そして、それがほかの国でどのように応用できるのかを6カ国で試行錯誤してきました。それは『大量生産×手仕事』という掛け算だったけれど、『デザイン×経営』という意味でも同じです」

「感性」を経営に、「経営感覚」を感性的な活動に

山口は「代表取締役社長」でありながら、マザーハウスブランドの「チーフデザイナー」を務める希有な存在でもある。

2つの肩書を持つ山口の中には、つねに「経営とデザイン」「ロジカルとクリエイティブ」という対極にあって、ケンカしやすい2つの立場が同居しているという。

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