カネも通信も丸裸、ロシア「監視社会化」の恐怖

「ハイテク捜査網」がデモを心理的に圧迫

ロシアの首都モスクワで選挙の自由を求めるデモに約5万人が参加した(2019年8月10日、写真:ロイター/アフロ)

モスクワでは9月8日の市議会議員選挙を前に、独立候補への妨害に反対する大規模デモが頻発し、緊張が高まっている。

これに先立つ8月3日、「モスクワ警察が町中の監視カメラ網を始動させる」と報じられた。AI(人工知能)による個体識別機能が搭載された監視カメラを使い、「対象者の移動ルートを完全に追跡し、自宅まで突き止める。これで扇動者たちが監視の目をかいくぐるのは不可能になる」(インターネットジャーナル「スローヴォ・イ・ジェラ」)。

首都全域で監視カメラを稼働させるのは初めてのことだという。

金や通信情報をため込む「巨大監視マシーン」

プーチン政権はAIを使って市民の監視活動を強化している。今回のモスクワ警察の動きはその一例だ。

しかし、何十万人ものデモ参加者の中から、どうやって「扇動者」と「単なる参加者」を見分けるのだろうか。

反体制運動指導者のナワリヌィ氏のような有名人なら、すぐに特定して追跡できるだろう。しかし、モスクワで拡大しているデモは、無名の組織者たちが同時発生的に起こしている。無数の参加者から、資金や動員力を持つ「恐るべき扇動者」を割り出すことが本当に可能なのか。

結論を言えば、技術的には可能だ。

それは、モスクワ警察の捜査力がすぐれているからではない。ロシアには市民の個体データ(顔や指紋)やお金の使い方、通信履歴をため込んだ巨大な監視マシーンが存在する。そのデータベースと照合すれば、扇動者を割り出せる。この巨大監視マシーンは、警察でも内務省でもない。国営銀行「ズベルバンク」だ。

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