カネも通信も丸裸、ロシア「監視社会化」の恐怖 「ハイテク捜査網」がデモを心理的に圧迫

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ズベルバンクの狙う個人情報は「お金の流れ」にとどまらない。国民の生体情報や通信履歴も収集しようとしている。

冒頭のモスクワ警察の顔認証技術も、ズベルバンクが開発をサポートした。この顔認証システムは表向き、オンラインサービス利用者を認証するために導入された。

他の銀行同様、ズベルバンクは支店数を急激に減らしている。その結果、多くの利用者がオンライン口座に頼ることになるだろう。オンラインサービスを利用するには、個体識別情報(顔写真)を同行のデータベースに登録しなければならない。ATMでも、やはり顔認証データの提供が必要になる。

もはや社会インフラとなったズベルバンク

さらに2018年9月には通信子会社「ズベルモバイル」がサービスを開始した。ズベルバンクに口座があれば直接引き落としとなるなど、他の通信会社にない利便性がある。割引などの特典も豊富だ。2019年8月現在、ズベルモバイルはロシア連邦を構成する83地域中(クリミアを除く)、半数以上の45地域に展開している。ロシアのような広大な国では異例のスピードだ。

こうしてズベルバンクは市民の通信履歴データも手中に収める立場となった。他の通信会社の契約者でも、通話相手がズベルモバイル契約者であれば、その通話履歴はズベルバンクグループに蓄積されていく。

ズベルバンクはもはや、多くのロシア国民にとって「まったく使用しない」ことが難しい社会インフラとなっている。同行はすでに巨大銀行でさえない。利用者の通信履歴と個体識別情報、資金の流れを一体的に集約分析できる巨大なデータセンターなのだ。 

次ページ顔認証技術が治安機関に提供されている
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事