カネも通信も丸裸、ロシア「監視社会化」の恐怖 「ハイテク捜査網」がデモを心理的に圧迫

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ズベルバンクは顔認証技術を治安機関に提供していることも隠していない。2018年7月18日付けの大手経済紙コメルサントのインタビューで、同行のクズネツォフ取締役会副会長は次のように述べている。

「弊行には、顧客行動や取引などに関する膨大なデータがあり、各顧客の行動パターンを見ることができます。(中略)すでに、この顔認証技術を地下鉄の監視システムでテストしました。1カ月で、捜査対象の約60人の検挙につながるという目覚ましい成果を上げました。内務省機関の代表者たちにこのシステムの可能性を説明し、大いに関心をもってもらえました」

ズベルバンクの個体識別技術とビッグデータが犯罪捜査に活用される一方、モスクワのデモでも個体識別機能付き監視カメラが利用されている。ただ、デモ参加者の追跡や検挙にズベルバンクのデータがどのように使われているのかはわかっていない。

SNSでデモ参加者の個人情報がさらされる

しかし、デモ参加者への追跡に関して気になる動きがある。すでに複数のSNSブログや匿名サイトで、デモ参加者の写真や個人情報が公表され、注目を集めている。

例えば、SNSブログ「少佐殿」では「(デモ実施地区の1つである)バルビハ地区の首謀者」「こいつがいなければ何も起こらなかった」などの評価をつけて、市民の実名やアドレスを掲載している。「少佐殿」はあまたある同様のブログの一つに過ぎないが、デモ参加者らは「監視カメラのデータと個人情報データベースを照らし合わせている」と、政権の関与を疑っている。

捜査当局がズベルバンクのビッグデータを活用してデモ参加者の個人情報を突き止め、公開したという確証はない。しかし、モスクワの監視カメラ網がデモ参加者に一定の心理的圧力を与えたことは確かだ。そして、クズネツォフ氏が認めるように、この監視カメラの個体識別技術はズベルバンクが提供したものなのだ。

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