「ライフ・シフト」に学ぶ人生100年時代の心得 社会の分断をどう防ぐかが世界共通の課題に

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日本では社会の変化も、40~50代の層の意識変化を促している。実際、少子化と高齢化が急速に進んでおり、その傾向は日本が他国よりも顕著だ。そのため若い労働者が不足しており、より多くの年配者が労働市場に参加し、経済成長を支えることを求められている。これまでのように、60代で定年という人生ではなく、より長く働くための意識変化が、日本の中年世代にこそ必要になっているのだ。

――マルチステージの人生では、組織に依存しない個人のキャリア構築がより求められます。その場合、ハイキャリアを築くエリート層と、AIやロボティクスに仕事を奪われる層とに分断されるとの見方もあります。

分断の傾向はすでに生じている。それは日本よりも欧米でより顕著だ。十分な教育を受けられず、時代やスキルの変化についていけない層をどう支えるか。これは各国の政府の共通課題である。

政府は変化についていけない人に教育の機会を提供し、サポートしなくてはならない。企業側にも変化が求められる。これまでの企業は、70年人生を前提に構築された組織だった。しかし、これからは人生100年の時代で、人々は60年間以上を労働に充てることが可能になる。その前提で、企業は組織を作り直す必要がある。

政治や企業をどう変えるべきか議論する

『ライフ・シフト』は33万部のベストセラーになっている(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

今リンダと『ライフ・シフト』の続編を書いているが、そこでは長寿とテクノロジーの関係性を取り上げている。私は『ライフ・シフト』と次の本とで、人生100年時代に政治や企業の組織をどう変えていくべきか、議論を促したいと考えている。

――人生100年時代を生きる個人へのアドバイスはあるか。

マルチステージ人生を充実して過ごすには、自分の将来に投資することだ。あとは若いフレッシュな気持ちを保つために、自分とは異なる年代の人と多く接することも勧めたい。異なる世代の異なる考え方を、つねにオープンな姿勢で受け入れることが、若くあり続けるためのいちばんの秘訣だと考えている。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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