「ライフ・シフト」に学ぶ人生100年時代の心得 社会の分断をどう防ぐかが世界共通の課題に

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多くの人が余剰時間を有効に使うようになれば、人生はこれまでのような3ステージではなく、マルチステージのものへと変化していく。それは私がリンダ・グラットン氏との共著『ライフ・シフト』で説いたとおりだ。人生の探索期間である「エクスプローラー(探検者)」、組織に雇われずに生きる「インディペンデント・プロデューサー」、複数の活動を同時に行う「ポートフォリオ・ワーカー」などと複数のステージを、多くの人が生きるようになるだろう。

こうしたことは、人生100年時代の利点だと私は考えている。『ライフ・シフト』を出版したのも、こうした利点を多くの人に伝えたいと考えたからだ。もちろん、マルチステージの人生に移行するには、人々がキャリアに対する意識を変える必要がある。

地域によって意識変化にずれ

――キャリアの意識変化は全世界で起こっているのか。それとも地域によって差があるのか?

アンドリュー・スコット(Andrew Scott)/英ロンドン・ビジネススクール経済学教授、元副学長。オックスフォード大学を構成するオール・ソウルズカレッジのフェローであり、かつ欧州の主要な研究機関であるCEPRのフェローも務める。2005年よりモーリシャス大統領の経済アドバイザー。2016年に同僚のリンダ・グラットン氏との共著『ライフ・シフト』を刊行(撮影:今井康一)

大きなトレンドは世界中で同様だと考えている。ただ地域により、抱えている課題や解決策が異なるため、多少のずれはある。それは『ライフ・シフト』の読まれ方の差にも表れている。

例えばアメリカではベビーブーマーの世代が今、引退すべきかを迷っており、『ライフ・シフト(原題『The 100-Year Life』)』を手に取っている。英国ではもう少し若い40~50代の人が、キャリアに悩んで買っている。日本の読者は、より高齢者や女性、また若い人が多いのが特徴だ。日本では、そうした人々がキャリアを変化させようという意識を強く持っていると考えられる。

――40~50代の男性読者にはあまり届いていないと考えるか。

私はその点を心配している。若い世代ほど、時代の変化に柔軟に対応しやすい。ただ、40~50代の多くの人は、これまで70歳で人生を終わる3ステージのキャリアを設計してきたため、マルチステージ人生にシフトする用意ができてない。

ただし、実際に社会を支えている中心層は40~50代の世代でもある。この世代こそが社会を変える主軸になる。彼らにこそ、もっと多く『ライフ・シフト』を読んでほしいと思っている。

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