「水商売の人専用」の不動産屋の大きすぎる意義 ワケありの人にも寄り添う歌舞伎町の店

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岡さんにはもう1つ、実現したいことがある。それは、水商売出身者の雇用の受け皿になることだという。

「今は水商売をしているけど、昼の仕事に移りたい方って歌舞伎町にたくさんいると思うんです。僕自身はたまたまコネで不動産屋さんに入れましたが、それがなかったら就職できていたかわかりません。だったらうちがセカンドキャリアの入り口になれればと。お客さんも水商売の方なので、なじみやすいと思いますし、ここで経験を積んで次のステップに進んでもらっても構いません」

みすべやでは現在、岡さんを含め7人が働いている。全員が一度は水商売を経験したことがあるという。思い描いているみずべやのあり方が、着実に具現化できている形だ。今後は労働環境を整えて、スタッフたちにより満足して働いてもらいたいという。

「水商売向けの不動産屋と聞くと、派手に思われますが、僕はめちゃくちゃ堅実だと思います(笑)。ぜいたくもほぼしないですし、その分のお金を広告料に使っています。そうすることでお客さんが増えれば、社員の給料も上がる。稼げると聞けば新しい人も集まりやすくなる。人が増えれば、社員の休みも増やせますから」

「新生活の始まりを支えてくれる存在」

今後も新宿エリアに特化して、みずべやをより歌舞伎町に浸透させていきたいという岡さん。一時は渋谷や池袋への展開も考えたが、「社員を路頭に迷わせるわけにはいかないので」と堅実な姿勢を崩さない。

肥沼和之さんによる歌舞伎町連載、1回目です

不動産屋は、新生活の始まりを支えてくれる存在だ。とくに地方から上京する人は、土地勘がなかったり、エリアの特性がわからなかったりすることが多々ある。東京に知人も少ない場合は、部屋探しだけでなく、生活全般の相談にも乗ってくれる不動産屋は非常に頼もしいだろう。

一般の方にとってもそうだが、水商売の方はとくに顕著だと岡さん。自身が経験したように、部屋を借りたくても、水商売というだけで冷遇されることもあるからだ。そういう方に寄り添い、不安を解消して、満足してもらえる部屋探しのお手伝いをしたい。一方で水商売を卒業し、昼の仕事に移りたい方を支援したい。自由を享受しつつ、安住も求めている水商売の人々に、みずべやは寄り添い続けている。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京都生まれ。ルポルタージュや報道系の記事を主に手掛ける。著書に『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』(青月社)、『フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。』(実務教育出版)。東京・新宿ゴールデン街の文壇バー「月に吠える」のオーナーでもある。ライフワークは愛の研究。

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