アップル「ホームポッド」2台使いが秀逸すぎる デジタル音楽のためのユニークなスピーカー

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例えばモーションセンサーは、スピーカーが設置されたり場所が移動したことを検知して部屋に合わせたキャリブレーションを行うトリガーとして用いられている。

加えて、音楽を解析して、ボーカルなど主たる音声と背景にある音声を分離し、7つのツイーターに対して直達波と反射波で振り分ける仕事もしている。HomePodのハードウェアを環境に最適化して最大限に生かす処理を、A8が担っているのだ。

ステレオペアにした場合でも、必ずしも右チャンネルが右のHomePodのみから流れるのではないという。右チャンネルに収録されている背景の音を、左のHomePodの反射波に振り分けて再生することで、より自然で正しいステレオ再生を実現しようとするそうだ。

デジタル時代に再設計されたユニークなスピーカー

HomePodはインテリア性を高めながら、これまでとは異なるアプローチで部屋のオーディオ環境を再設計する製品と言える。

大きな音で再生すると、1つのHomePodでも、直達波・反射波を使い分けてステレオ再生を行う特性を体験できたが、さすがに常時その音量では、日本の集合住宅での利用は現実的ではないと感じた。それほどパワフルな存在と言える。

その分、ステレオペアリングで2台を用いた音楽再生を行うと、より小さい音でもHomePodが奏でる音像を感じることができる。ただしそのためには3万2800円×2台分の金額を支払う必要がある。

スマートフォンで音楽を聞く若いユーザーにとって、Apple Musicに完全に対応する点はメリットと言えるが、その金額を出すならより高性能のワイヤレスヘッドフォンを選んでもおつりがくる。

一方、それまでハイエンドのオーディオをそろえてきた人にとっては、自分のこだわりを一切排除することをよしとするなら安く感じるかもしれない。iTunesだけでなくApple Musicでも24ビットデジタルマスターの音源「Apple Digital Masters」での配信が始まり、これを7万円のシステムで楽しめる点は、より手軽な日常の音楽の楽しみとして満足できるのではないだろうか。

なにより、Wi-Fiさえ通じていればどこにでも設置できる自由さは、インテリアの配置の面でも有利に働く。これは住宅の中だけでなく、店舗などの空間でも同様といえる。

HomePodは、デジタル時代に再設計されたユニークなスピーカーとして、今後評価が高まっていくのではないか、と予想できる。その一方で、日本の小さな部屋には若干持てあますことになるし、屋外に持ち出したり、鼻歌が心地よいお風呂などの空間に持ち込むことも難しい。

スマートスピーカー、Bluetoothスピーカーはすでにたくさんの製品が登場しているが、音声アシスタントをサポートして、Wi-Fi対応で自律的に音楽を再生でき、より小型・軽量・防水といった機能性を持つ製品はまだ空白域と言え、後発のHomePodもその領域を埋めていないといえる。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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