その不調は夏バテではなく「夏季うつ」かも エアコンによる「急激な温度差」に要注意

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2. 冷たいものや水分をより多くとってしまう人

熱中症予防にも水分を取ることは必須ですが、口当たりのよいものや水分でお腹がいっぱいになってしまうと、食事が偏り、知らず知らずのうちに必要な栄養素が取れなくなっている場合があります。これにより、気持ちをコントロールするホルモンの一種である「セロトニン」の合成に必要な必須アミノ酸が足りていないことがあります。

3.女性

季節性感情障害は、男性に比べて女性のほうが3倍なりやすいといわれています。女性ホルモンの変動に加え、光や温度などの外的刺激に敏感なことが原因として挙げられています。

「夏季うつ」にならないための対策

生活環境の中で繰り返される激しい温度の変化は、心身に負担をかけます。

職業や生活形態で致し方のない方もいるとは思いますが、可能ならエアコンの設定温度などを配慮して、緩やかな変化を心がけましょう。さらに自宅でも、30度を超える外から帰宅し、いきなり部屋を19度設定にして必要以上に冷やすといったような極端なことをせずに、ぬるめのシャワーを浴びるなどして適温でも快適に過ごせるようにすることも大切です。

また、蒸し暑いと、どうしても食欲が落ちやすくなるとは思いますが、セロトニン合成に必要な必須アミノ酸のトリプトファンを取り込むために、乳製品、大豆製品などを積極的に取り入れましょう。

清涼飲料水ばかりでなく牛乳や豆乳もお勧めです。コーヒーなどを、ブラックでなくカフェラテなどに変えるだけでも効果が期待できます。この時期には、チーズ、枝豆、冷奴などもお勧めです。そのほかにも、しっかりと栄養素を取り込むために肉や魚もバランスよく取ることが大切です。

また、強い光もストレスの原因となりますので、部屋の中では、冷房効率を上げるためにもレースのカーテンを引くなどソフトな遮光も必要です。照りつける日差しの下では、サングラスなどを適宜使用されるのもよいでしょう。また最近は、窓の大きなカフェやレストランも多いので、太陽が高い時間帯には、強い光を避けるために窓際の席を選ばないなど、座る位置にも配慮するとよいかと思います。

環境の変化による身体の疲れは、休むことによってある程度回復が見込まれますが、心の疲れは気づきにくく、回復させるのが難しい傾向があります。大量の情報や変化、人とのしがらみで疲弊している心を休めるためには、誰とも関わらない「1人の時間」を持つことが必要です。さらに「無心に取り組めること」や「何を考えるでもなく、ぼーっとする時間」を確保することも効果的です。

身体と心は連動しています。身体への急激な変化は負担が大きく、積み重なると心にも影響を及ぼします。ですから、旅行先でマリンスポーツなど急に激しい運動をする、普段インドアなのに長時間日焼けするなど、この時期にやってしまいがちなことに注意し、適度に量や時間をコントロールすることが大切です。何ごとも緩やかな変化を意識して、まだまだ残暑も厳しい中、暑い夏を乗り切っていただければと願います。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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