韓国の「半導体材料国産化」を見くびれない理由 模倣や日本企業からの人材引き抜きに警戒だ

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不買運動に象徴される反日感情を、経済が低迷する韓国政府が政治利用するのではないかと指摘する専門家筋の声も聞かれる。

そのような動きが懸念される背景には、韓国という国は国家的危機に直面したとき「同胞」が一体になるという国民性と、朝鮮民族に根付く「恨(ハン)」の思想がある。恨は、単なる恨みつらみではなく、悲哀、無念さ、痛恨、無常観、優越者に対する憧憬や嫉妬などの感情をいう。今回の日本政府による規制措置が、恨の感情を炎上させるかもしれない。

政治的対応はさておき、日本政府の「経営戦略的失敗」は、韓国に「材料、部品の国産化を急がなくてはならない」と再認識させてしまったことだ。

先進国にとって上手な商売とは何か。それは、「なぜ儲かっているのかわからないビジネス」である。日本企業を見れば、家電をはじめとする最終商品(B to C系商品)の競争力が落ちてきているからこそ、模倣されにくい「見えざる競争力」が求められる。要するにブラックボックスとなる参入障壁が高い産業である。この点、今回、対韓輸出規制品目となった半導体材料は、日本にとっては「金のなる木」と言えよう。

今回の1件で、日本の半導体材料メーカーの世界的に高いシェアを占めている点が注目された。例えば、レジストは91.9%(JSR、東京応化工業、信越化学工業)、フッ化ポリイミド(三菱ガス化学)は93.7%と寡占状態にある(JETRO調べ)。

日本企業の従業員を虎視眈々と狙う韓国側

しかし、浮き沈みの激しい半導体市況に左右されやすいという弱点もある。高シェアを誇る日本の材料・部品メーカーであっても、市況の変化に伴う業績の悪化はありうるし、技術者をリストラする局面もあるかもしれない。

そのとき韓国メーカーは彼らを高額報酬で虎視眈々と狙ってくるだろう。リストラを実施しなくとも、会社の評価を不本意に感じ早期退職を検討している技術者、定年まで勤めあげた後、第2の人生を模索しているベテランなども標的になる可能性も少なくない。

「終身雇用はもはや維持できない」と中西宏明・経団連会長や豊田章男・トヨタ自動車社長が公言し、早期退職者が急増している。日本企業が株主重視経営へ傾く中で、従業員を大切にする経営は、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界と化している。

アイリスオーヤマは大手電機メーカーの退職シニアを積極的に採用し、またたくまに「家電メーカー」の一角を占めるようになった。日本企業が日本人をスカウトしている場合は、むしろ人生二毛作時代の美談として受け取れなくもない。が、半導体材料・部品でも韓国メーカーに追いつかれ、追い越されてしまった場合、美談では済まされない。

日本は国家的危機を迎えるかもしれない。輸出規制は政府の命令で行えても、企業で働く従業員の心は、日本政府の思惑どおりにはならないからだ。

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