韓国の「半導体材料国産化」を見くびれない理由

模倣や日本企業からの人材引き抜きに警戒だ

なぜ、韓国企業は日本側の想定を超える速さで日本のお家芸にキャッチアップできたのか。それは、「模倣」と「水平分業」を巧みに駆使したからである。日本企業のお家芸が高度な生産システムであるのに対して、韓国企業が最も重視したのはスピードである。

模倣は一般的に「ずるい」と思われている一方で、まねて超えるというのは、とても頭のいい経営戦略である。ときには、ライバルの失敗を見て反面教師にもできる(井上達彦・早稲田大学教授の『模倣の経営学』日経BP社、に詳述されている)。

加護野忠男・神戸大学大学院特命教授は「現在のパナソニックが最も競争力を発揮していたのは、(松下電器を揶揄して)『マネシタ電器』と呼ばれていた頃だ」と指摘している。たしかに、富士通も「打倒IBM」と臆面もなく言い、大型コンピューターで競い合っていた時代は、労使ともに闘争心むき出しで、社内は活気にあふれていた。

模倣は研究開発に大きな投資と多くの時間を割くことなく、「売れ筋」となる技術を簡単に手に入れることができる。

この点はM&A(企業の合併・買収)と類似している。研究開発投資と時間を節約できた分、改良に時間を割ける。一から積み上げていく独自開発に比べ、完成度が高い技術をベースにした模倣は、改良の時間も節約できる。それどころか、模倣しながら多くのことを学び、学ぶ過程でイノベーションも生まれる。

模倣することで経済発展してきた日本

例えば、“kaizen”という英語にまでなり、世界の産業界に広まったトヨタ自動車の「トヨタ生産システム」も、創業者の豊田喜一郎氏がアメリカの自動車産業を見学したところから始まり、追いつけ追い越せの号令のもと、必死で模倣していく過程で生まれたイノベーションと言えよう。

日本企業は欧米企業の技術を模倣したとしても、日本独自の改良ノウハウにより、内製化することに情熱を燃やした。

例えば、シャープの創業者・早川徳次氏は日本初の国産ラジオを製品化する際、大阪・心斎橋で目にしたアメリカ製ラジオを持ち帰って分解し、見よう見まねで、部品から一つひとつ手作りした。今でいうところの垂直統合である。自社で何もかも作ることが日本の常識であり、誇りだった。たとえ、部品、材料を外のメーカーに作ってもらったとしても、「ケイレツ」と呼ばれる強固な結びつきを重視した。

半導体産業においても日本では、半導体メーカーが中心になり、製造装置、材料メーカーを育て、ネットワーク化が図られた。液晶パネルにおいても同様のエコシステム(生態系)が築かれた。

ところが、韓国メーカーは、製造装置や材料をアメリカや日本から調達する水平分業を貫き、スピード重視型の経営をコアコンピタンスとする模倣の戦略を徹底した。自動販売機にコインを入れるとドリンクが出てくるように、製造装置と材料を投入すれば半導体や液晶パネルが生産できる大規模投資型量産産業には、豊富な資金力をバックに大胆な投資ができる財閥資本主義が適していた。

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