韓国の「半導体材料国産化」を見くびれない理由 模倣や日本企業からの人材引き抜きに警戒だ
韓国半導体産業の雄は、同国GDP(国内総生産)の5%を担うサムスンの中核企業・サムスン電子(三星電子)である。その歴史をたどると、1969年1月に三星電子工業を創業。同年12月に(2009年12月にパナソニックの子会社になった)三洋電機と合弁で三星三洋電機を設立し電子産業に進出したことにさかのぼる。
このときに、三洋電機の懇切丁寧な指導がなければ、サムスンのエレクトロニクス産業は誕生していなかったことだろう。その後も、NECと白物家電、ソニーと液晶パネルの合弁会社を立ち上げるなど、日本を先生にして模倣の戦略を着々と進めてきた。
この模倣の戦略には副産物があった。「お客様は神様」である日本の製造装置メーカーは、セールスを行う過程で、アメリカのライバルに顧客を取られたくないという思いも手伝い、その使い方を手取り足取り教えた。製造装置には、すでに日米の半導体メーカーと製造装置メーカーが長い時間をかけ、すり合わせて作り上げたノウハウが詰まっていた。
韓国メーカーは、顧客の立場を大いに活用し、日本やアメリカの半導体メーカーに内在する知財をスピーディーに吸収できたのだ。加えて、日本にある「研究所」が情報収集だけでなく人材スカウトの戦略拠点となった。
2009年12月、三洋電機がパナソニックにより子会社化されたとき早速、三洋電機のめぼしい技術者たちにサムスンからお誘いの声がかかったと聞く。自宅、携帯電話、ときには職場にまで電話やメールによるスカウト攻勢がかけられた。その中には、日本の数倍に当たる報酬を提示され、韓国へ渡った人もいた。
韓国企業の恐ろしい“戦略”
この頃、次のような話がまことしやかにささやかれた。
金曜日夜に空港へ行くと、ソウル行きの飛行機の搭乗口前で、複数の日本のエンジニアの顔が見られた。1泊2日で缶詰になり韓国企業で「家庭教師役」を務めることで、破格の報酬が渡された。
日本の技術や技術経営の肝を知る関係者が東京・赤坂の料亭で接待され、2次会は韓国クラブへ。接待が終わると高級ホテルのスイーツルームが予約されていた。その部屋の扉を開くと美女が……。
都市伝説まがいの噂話であり、真偽のほどは定かではないが、韓国企業の情報収集が実に巧みであることは否めない事実である。
このほど韓国政府が発表した巨額の公共投資は、韓国企業が研究開発のみに振り向けられるとは限らない。情報収集や人材スカウトに投資する可能性もある。公的資金が投じられたとなれば、韓国政府はそれを受け取った企業に対して結果を求めるだろう。当該企業は、結果を出すためには「何でも」トライしてくる可能性がある。この「何でも」が韓国企業の最も恐ろしい戦略である。
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