車好きでも意外にわかってないタイヤの重要性 路面との唯一の接点だからこそ本当に奥深い

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夜遅く電話をしたときでも、「今からこい」といわれ、深夜の国道を太田市まで往復したことも珍しくなかった。わが家からの距離は100キロを少し超えるくらいだったと思うが、高速道路などない時代。時間はかかった。

夜中に着いても、「おう、よく来た!」と笑顔で迎えてくれ、一緒にクルマに乗って疑問を解いてくれた。

BSとヨコハマのエンジニアにも多くを教えていただいたし、ユーザーの望んでいるタイヤ像についての議論などもよくした。

そうした流れの中で、「タイヤ試乗記」を書いてみないかという話しをモーターファン誌からいただいた。

「タイヤ試乗記」が生まれるまで

それまでも、テストコースでの定常的テストから得たデータを軸にしたタイヤの記事は、欧米の自動車雑誌には掲載されていた。

しかし、定常テストなし、「官能評価」だけのタイヤ評価記事は「世界で初」とのこと。これはBSとヨコハマの方からの情報だったが、
「畏れ多い仕事」ということになる。

まずは、小関さんに相談した。小関さんは、「手伝うからやれよ!」と強く背中を押してくれた。BSとヨコハマの方々にも相談したが、「やってほしい。やるべきです。サポートはいくらでもしますから!」と、これまた強く背中を押された。

「タイヤ試乗記」は1970年代の終わり頃から連載が始まったように思うが、そのあたりの記憶は定かではない。

操安性、快適性、制動性、ウェット性能等々を、僕の身体が感じたまま、できるだけリアルにわかりやすくレポートし、僕なりの評価を加えた。

地味な記事だが、読者からの反響は想像したよりずっとよかった。でも、より強い反応を示したのは、タイヤメーカーであり、自動車メーカーだった。

そして、僕のもとにはタイヤ/自動車メーカーから、タイヤ開発/車両とのマッチングに関しての仕事の依頼が数多く舞い込むことになったのだ。

タイヤ官能評価を真剣に学んだことは、今現在でも僕の仕事に役立っている。大いに……。

「岡崎さんの記事は、初めての、そして唯一の”タイヤ官能評価記事”として、ロンドンにあるタイヤ資料館に置かれていますよ」と、タイヤメーカーの方から聞いたことがある。

もうずっと前の話しだが、そうだとしたらとても光栄なこと。僕自身、その事実を確認したことはないのだが……。

タイヤを学ぶことは地味で労多いこと。でも、僕に多くをもたらしてくれた。クルマを評価することをグンと奥深く、幅広いものに、そして楽しいものにしてくれた。

(文:岡崎宏司/自動車ジャーナリスト)

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