アサヒ「スーパードライ」が王者ゆえ抱える悩み 大黒柱が健全なうちに次世代を取り込みたい

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ロングセラーとしてのスーパードライの横顔も紹介しよう。

1987年3月に発売されたスーパードライは、「天ぷらや白身魚の刺身に合うビール」というテーマのもと、開発陣が試行錯誤してつくった商品だ。前年にヒットした「アサヒ生ビール」(当時の商品名)の勢いに乗り、「さらに味をクリアにして20代、30代が飲み飽きない辛口のビール」をコンセプトにした。当初は「年間100万箱」が目標だった。

発売すると消費者の圧倒的な支持を受け、初年度は1350万箱を販売。それまで長年にわたりシェアも下落続きだった会社が、当時、ビール業界の絶対的王者だったキリンビールの牙城を崩したのは有名な話だ(2001年にビール類全体でアサヒが首位)。現在の50代、60代は、発売当時にアサヒが狙った20代、30代が加齢した世代に当たる。

1987年「日経ヒット商品番付」(当時は日経流通新聞)で「東の横綱」に選ばれ(西の横綱は「花王アタック」)、10年後の1997年、ビールのトップブランドとなった。

だが、「後継」となる“孝行息子・娘”が育たなかった。野球に例えれば、大ホームランを打った後で、小ヒットしか出ない状態。大打者「スーパードライ」が後を託せるような、生きのいい若手(新商品や新シリーズ)の登場が待ち望まれる。

「今日のメシ」と「明日のメシ」

本企画を進めるなか、アサヒGHDで大きな動きがあった。7月19日、オーストラリアのビール最大手・カールトン&ユナイテッドブルワリーズを含む、AB InBev社の豪州事業を160億豪ドル(日本円で約1兆2096億円)の巨額で買収すると発表したのだ。近年、同社は海外の大型買収を進め、スーパードライを含めた海外売り上げを伸ばしている。

これらは成功すれば、やがて相乗効果が出てくる「明日のメシ」だが、事業会社としては、屋台骨を支える国内の「今日のメシ」を稼ぎ出さなければならない。

今年はようやく7月下旬から月末近くになって、国内各地で「梅雨明け宣言」が出た。いよいよ関係者が待望した「盛夏」だ。“酒離れ”時代とはいえ、晴れて暑くなれば、ビールの消費拡大も期待できる。

ロングセラーブランドが、支持基盤の消費者を若返らせ、再ブレイクを果たせるか?

前述した今田美桜さんは「2019年ネクストブレイクランキング(女優編)」(オリコンが運営する情報サイト「デビュー」)で1位に輝いた。「ザ・クール」を突破口に、今田さんの “ネクスト”と“ブレイク”にあやかりたい思いも透けて見える。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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