スターだらけのJ1・神戸、クラブ経営改革の要諦 楽天ヴィッセル神戸の立花社長らに聞く改革

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現在はスペインの至宝、アンドレス・イニエスタや元スペイン代表のエース、ダビド・ビジャ加入の効果もあり、チケットの売り上げが芳しいが、継続してスタジアムを満員にし、地元との密着を強化していく必要もある。

「チームに依存する形ではいけないと思います。やはり、有名選手がいる時代もあれば、そうじゃない時代もあります。ロサンゼルス視察の目的は、スマートであり、快適なスタジアム作りの重要性を学ぶことでした。イニエスタ見たさに来たはいいけど、試合前はすごく並ぶし、食べ物は普通だし、暑い中すごく大変で疲れちゃったというのでは、サッカーを楽しむ気持ちが薄れてしまう」

スタジアムに行ったら、おいしいものを並ばずに購入でき、グッズやイベントも充実していて、なおかつサッカーも面白い。だから、あのスタジアムにまた行こう、という状況を作ることが重要なのだ。

イニエスタ効果が続く今だからこそ改革をする

「今、イニエスタが加入したことで観客数が増えています。この状態が続いているうちに、満員でもお客様がスムーズに飲食したり、スタジアム内に入れる状況を作りたい。キャッシュレスに取り組んでいますが、次はチケットレスを目指します。スムーズに買ったり、入ったりするだけでなく、履歴が残るから、あとで何を買ったかがわかり、楽しかったなと振り返れる。そうした体験ができるように、この1、2年でスタジアムを一気に整えたいと考えています」

ヴィッセル神戸のホームゲーム開催日に、ノエビアスタジアム神戸では全面キャッシュレス対応となる。電子マネーの楽天Edy(中央左)や楽天ペイ、クレジットカードで決済が可能だ(編集部撮影)

まずは収益を得るグッズショップ、ラウンジ、飲食店の強化を進め、タイトルを獲得できるようになったら、ヴィッセル神戸ミュージアムを作る――そんなふうに構想は広がっている。

「アイテム数も、野球に比べて少ないんですよね。楽しみ方が少ないというか、サッカーは身に着けるものが中心。でも、家とか、車とか、身近なところにも、ヴィッセル神戸のクッズを置いてほしい。

そうやってクラブが生活の一部になれば、ファン・サポーターのクラブ愛はいっそう高まると思うです。そのためにも、グッズやアイテムを増やしたいと考えています」

タイトルを目指し、アジアナンバーワンのクラブを目指して戦っているが、そうした目標が実現する頃には、ピッチ外でもアジアナンバーワンを実現する――それが、ヴィッセル神戸の思い描く未来像なのだ。

「第3部アカデミー編」に続く。(文中一部敬称略)

飯尾 篤史 スポーツライター

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いいお あつし / Atsushi Iio

東京都出身。明治大学卒業後、サッカー専門誌の編集記者を経て2012年からフリーランスに転身、スポーツライターとして活躍中。『Number』『サッカーダイジェスト』『サッカーマガジン』などの各誌に執筆。著書に『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成に岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(ベスト新書)などがある。

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