意外と多い「パン屋」の食品ロスは減らせるか

「余ったパンを売る」という新ビジネス

リベイクに出すときは客の顔が見えないので、フォローに気を使っている。5月~10月は冷蔵して送るリベイクの指定はあるが、さらに、山崎氏は「届いたら冷凍保存してくださいとお願いし、保存方法の注意書きと手書きのメッセージをつけます」と言う。メールで購入客に送付する旨と宅配便の商品番号も知らせる。すると、「娘とワクワクしながら待っています」「今回もいろいろな種類が入っていて楽しそうです」などとメッセージをもらうこともある。

リベイクは店側にとって「保険のようなもの」と語る山崎氏(撮影:今井康一)

リベイクに参加したことで「精神的にも楽ですし、経済的にも助かります」と山崎氏は話す。

クアッガがパンのフードシェアリングサービスを始めたのは、食品ロスを出す業態のうち、パン屋が最も切実で積極的と感じたからだ。代表の斉藤優也氏はビジネスを立ち上げるにあたり、友人とともに2018年3~4月、東京都・神奈川県のパン屋、ケーキ屋、弁当屋など飲食店200軒に廃棄の悩みをヒアリングしている。

「パンは消費期限が比較的長い。そしてパン屋は、閉店間際まで商品を置いておく文化がある一方で、職人気質が強く、作ったものを捨てるのが忍びない、と考える人が多かった」と斉藤氏は話す。ヒアリングしたパン屋では、規模が大きい店ほどロス率が高く10%ほどにもなるが、個人店には売り切れたら早く閉店して、ロスを出さないようにするところもあったという。

開発者全員がパン好きだった

パンを対象に選んだ理由はもう1つある。それは、斉藤氏がパン好きで、システム開発を行ったエンジニアも、「沖縄旅行で18軒パン屋を巡った」と喜ぶパンマニアだからだ。4人のスタッフとインターンを抱えるクアッガには、元パン屋のスタッフもいる。

仲間で全国のパン屋をセレクトし、電話やファックスでアプローチして参加を求めた。パン屋のほとんどが好意的な反応で、参加店探しには苦労しなかったという。また、会員からの苦情もないと話す。

幼いころから環境問題に興味があったという斉藤氏(編集部撮影)

クアッガには手数料収入があるとはいえ、金額は微々たるもの。しかも、3カ月分の売り上げをすべて世界遺産の知床の保全に取り組む知床財団に寄付している。会社を回すお金は、システム開発で得ているという。

利益度外視で社会貢献に取り組む理由を斉藤氏は、「資本主義社会の中で、自然など、値段がついていないものの周りにはお金が発生しない。それはすごく悲しいから、人がいいと思うサービスでお金をつくって、価値があるものに還元していく仕組みを作りたい。その意思表示として寄付しました」と語る。

リベイクにパン屋や消費者が集まるのは、時流に乗ったからでもある。ここ1~2年、2015年9月の国連サミットで、全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に関する報道が増えた。資源に関わる食品ロスの削減、食品リサイクルの推進は、環境省と農林水産省も力を入れている。今年5月31日には食品ロス削減推進法が公布され、社会的関心も高まっている。

時流の変化を強く感じているのが、飲食店などで余った料理や食品をユーザーが割安で購入できる「TABETE(タベテ)」を展開する、コークッキングだ。タベテには、パン屋や飲食店、居酒屋、弁当屋などが参加。ユーザーがアプリやサイトを通じてロスが出ている店を探し、購入した場合は直接店に取りに行く仕組みだ。

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