意外と多い「パン屋」の食品ロスは減らせるか

「余ったパンを売る」という新ビジネス

2017年9月の試験導入後、昨年4月末から本格スタートしたタベテの利用者数は30~40代の女性を中心に約14万人に及び、販売した食数は6800に及ぶ。現在の利用者は店、ユーザー共9割が東京都内だという。1店舗あたり1商品を出す形で販売し、正規価格より3割程度の値引き率となっている。出品価格は250~680円と制限し、コークッキングには1セットにつき150円が入る。

ユーザーにとってはかなりの割安価格だが、ロス削減に熱心な店も多く、「出品」する際のコメントには、「おかわり自由としているため、余ってしまうことがある」「ビュッフェ形式なのでぴったりに作ることが難しい」「新鮮な食材を提供したいからこそ余ってしまうことも」といった理由を正直に書いているところが少なくない。

「こんなサービスは無理」と言われた

参加するうちパン屋は25店舗。その中でも、アパレルなどを展開するベイクルーズグループが運営するベーカリーチェーン「BOUL‘ANGE(ブールアンジュ)」では、6月7日時点で累計4785個のパン詰め合わせセットが売れている。基本的に毎日商品が出るというパン屋は、食品ロスが多い業態なのだ。

コークッキングは2015年12月に、元シェフの川越一磨氏が設立。日本スローフード協会理事でもある川越社長は10代から食や食文化に関心を持ち、規格外野菜などをスープにして一緒に飲む「ディスコ・スープ」に参加した経験がある。

料理を素材にワークショップやイベントを実施するコークッキングを設立した直後、川越社長はレストランやスーパーなどと消費者をアプリで結ぶフードシェアリングサービス「Too Good to Go」がデンマークで始まったことを知り、タベテのシステムを構想した。

同社で飲食業者の開拓営業に携わる取締役の篠田沙織氏は、「関心の高さは、SDGsの認知度と一致しているイメージがあります。サービスをリリースした時点では、食品ロスという言葉の認知度もあまりなかったので、現状説明から始めたのですが、最近は向こうから食品ロスの定義を話してくださることも多いです」と話す。

実はサービスを始めた当初は、飲食店が食品ロスを認めないほど、ロスに触れることはタブー視されていた。「『食品ロスがありますよね』と言うと『うちはロスないです』と返されることが多いので、『売り上げに還元できます』『新しいお客さんに会えます』、法人さん相手の場合は『SDGsやCSR活動の一環として取り組むことができます』などと説明して、やりやすくなりました」と、振り返る。

「こんなサービスは無理」「絶対儲からないよ」などと言われ、「ロスを出す店」とレッテルを貼られることを心配する風潮が強い、と肌で感じていた篠田氏。変化が出てきたのはここ1~2年だ。その中でも、毎日ロスが出るパン屋は、最初から前向きな感触を得た業態だったという。

篠田氏は「パン屋は、積んであるビジュアルイメージも大きいので、積み上げるために焼いておく、閉店間際まで焼き立てを出すといった文化がある。レスキュー数(タベテでの販売数)はダントツで多い業態です」と説明する。

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