旧エルピーダメモリ、広島でどう生き残ったか 外資傘下で巨額投資、世界の最先端工場に

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ただ、半導体市場は踊り場に差しかかっている。世界半導体統計(WSTS)によると、2019年のメモリ市場は前年比マイナス30.6%と予想されている。ライバル同様、マイクロンの経営も芳しくない。2018年12月~2019年2月期の売上高は前年同期比21%減の58億3500万ドル、営業利益も同45%減の19億5700万ドルだった。今月末発表の3~5月期も厳しい数字が予想されている。

需要低迷に合わせて減産も余儀なくされており、「年後半には市況が回復すると期待している」(メロートラCEO)というが、具体的な回復の兆しはまだ見えていないのが現状だ。

建設が続く東芝メモリの北上工場(写真:東芝メモリ)

巨額投資が必要な半導体ビジネスは一種の体力勝負だ。この状況は日本唯一のメモリメーカー、東芝メモリにも当てはまる。フラッシュを生産する東芝メモリは岩手県北上市に新工場を建設中だ。投資額は非公表だが、既存の四日市工場(三重県)を合わせ、年間数千億規模の資金を必要としている。

東芝メモリは4~6月期も赤字の可能性

だが、東芝メモリの業績も厳しい。2019年1~3月期はフラッシュ価格低下の影響で営業赤字に沈んだ。市況低迷は続き、4~6月期も赤字の可能性がある。5月末にはメガバンクなどから1.2兆円の資金調達を行ったが、借り換え資金が主。「無理に投資をするつもりはないが、将来の市場拡大ペースに合わせて投資をしなくてはいけない」(同社)という。

こうした厳しい競争下にありながら、半導体各社が投資を止めない背景には、世界の競争の激しさがある。基板に描く回路を細くする「微細化」は限界に近づいているが、少しでも高性能の半導体メモリを生産するため、その技術に各社はしのぎを削る。

生産設備には多額の費用がかかり、思い切った経営判断と資本力も欠かせない。そのため、世界の半導体メモリ市場はサムスン電子やSKハイニックスなど、DRAMで3社、フラッシュは5社でほとんどを占める寡占状態になっている。それでも競争は激しく、先端製品を作れなければ、市況が回復した際に競争力を失いかねない。

マイクロン広島工場の場合も、他社の傘下に入る形で十分な投資を受けられるようになったが、これで安定を保証されたわけではない。半導体メモリの内製化を目指す中国勢を含めて環境は厳しくなることが予想される。先端製品のマザー工場としての地位を守るためにさらなる投資に突き進む一方、技術研究の一層の進展が求められる状況が続くだろう。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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