半導体のスーパーサイクルは終わったのか? 好決算でも消えぬ製造装置会社の2つの不安

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今年10月に新棟が竣工したばかりの東京エレクトロン宮城工場(写真:東京エレクトロン)

ここ数年、空前の活況を見せてきた半導体業界。日本が強みを持つ製造装置の分野でこの秋、増益決算が相次いだ。先行きに対しても強気な見方が続いており、400から600ほどあると言われる製造工程の中で、とくに後半部分を担う企業の強気な姿勢が目立った。

筆頭は、最終工程を担う検査装置で世界シェアトップを争うアドバンテストだ。2018年4~9月期の営業利益は前期比4.5倍の337億円に急伸した。通期では売上高2650億円を見込み、達成すれば18期ぶりの高水準だ。

同社のシェアが拡大しただけでなく、市場全体が予想以上に拡大しているようだ。今後の見通しについて、吉田芳明社長は「メモリ市況の悪化に伴う投資調整は間違いなくあるとは思うが、それほど深くない調整にとどまる」と自信を示す。同じ後工程の東京精密も増益となった。

半導体前工程には減速の兆し

一方、川上にあたる前工程(半導体ウエハに回路を作る工程)を担う企業では、市場の鈍化をうかがわせる動きがみられた。

半導体製造装置で世界3位、国内首位の東京エレクトロンは2019年3月期の売り上げ見通しを当初の1兆4000億円から1兆2800億円に下方修正した。主因は半導体メモリメーカーの設備投資の延期だ。それでも営業利益は前期比9.9%増の3090億円と、3期連続の過去最高益を見込む。

河合利樹社長は決算説明会で「ビッグピクチャー(大局)に変更なく、IoTの実現に必要な半導体の需要は引き続き旺盛で、中長期の半導体製造装置市場の成長の見方についてはまったく変わっていない」と述べた。同社は今年5月の中期経営計画の中で、2017年に510億ドル(約5兆8000億円)だった半導体製造前工程の市場規模が、2021年には620億ドル(約7兆円)に達するシナリオを描いている。その通りにいけば、同社の売上高は1兆7000億円にまで伸びるという。

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