半導体のスーパーサイクルは終わったのか? 好決算でも消えぬ製造装置会社の2つの不安
もう一つ懸念されるのが米中貿易摩擦の影響だ。中国は現在、自国で使う半導体の多くを輸入に頼っている。その現状を変えようと、中国が2015年に策定した産業政策「中国製造2025」では、自国の半導体消費量に占める国内生産の割合を「2020年に40%、2025年に70%」とする目標を掲げている。
これが達成されれば、現在世界の半導体の多くを作っているアメリカにとっては都合が悪い。そのため、トランプ政権は中国の半導体投資に圧力をかけている。10月には中国の半導体メモリメーカーJHICCに対するアメリカ企業からの半導体製造装置の輸出を規制すると発表した。
中国の新設工場向けは製造装置各社にとって成長のけん引役だが、アメリカの圧力にかかわらず、今のところ中国が半導体産業への投資をやめる気配はない。「中長期的にはIoTを背景とするデータの増大による半導体の需要が生まれるという見方に変更はなく、大きな懸念はしていない」(東京エレクトロンの河合社長)と、今のところ各社は静観している。
人類が滅亡しない限り半導体は栄える
ただ、業界団体のSEMI(国際半導体製造装置材料協会)では、中国は2019年に半導体製造装置で世界シェアトップに躍り出ると予測している。市場の牽引役に漂う先行き不安は深刻な半導体不況にも直結しかねない。また、中国が順調に本格生産を始めた場合、半導体の供給過剰が世界的に起こることも懸念され、それもまたリスクだ。
好況だった半導体業界を取り巻くリスクは解決されずに残ったまま、その存在感は日に日に大きくなっている。それでも、関係者の間には楽観的な見方が根強い。それはIoTやAI(人工知能)、自動運転、5Gといった近未来のテクノロジーを実現するうえで半導体の役割は決定的に重要で、需要がなくなることはないという共通了解があるからだ。
ある製造装置企業の経営幹部は「半導体の景気が悪くなるのは人類が滅亡する時だ」と豪語する。ただ、AIや自動運転向けの需要は半導体市場全体からすればまだ大きくはない。DRAMやNANDといった既存のメモリが当分は市場の牽引役であることに変わりはない。
「半導体の景気悪化が人類滅亡への引き金を引く」とは言い過ぎだが、半導体バブルの崩壊がAIや自動運転といったイノベーションの開発や普及に悪影響を与える可能性もあるだろう。現状の高水準での安定飛行がいつまで続くのか、どのような着地をみるのかは今後も注視し続ける必要がある。
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