半導体ルネサス、「7000億円大型買収」の勝算 「自動運転強化」狙うが相乗効果に疑問の声も
「サッカーワールドカップにたとえるなら、予選通過ではなく、優勝を目指す」
7月11日、約7330億円という金額の大型買収を発表した半導体大手ルネサスエレクトロニクス。呉文精社長は、気合い十分といった様子だった。買収するのはアメリカの半導体企業・IDT(インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー)である。この買収を機に、「得意分野では絶対に一等を取る」と宣言した呉氏だが、その選択は吉と出るのか。
ルネサスの直近の買収は2017年2月。アナログ半導体を手掛ける同じくアメリカのインターシル(現ルネサスエレクトロニクスアメリカ)を約3200億円で買い取った。今回のIDTと合わせれば、買収総額は1兆円超。経営危機からの復活を果たし、反転攻勢に打って出ている。
自動運転分野の戦いが熾烈
「半導体市場は異種格闘技戦になってきた」。呉氏がそう語るように、ルネサスは厳しい競争の中に身を置いている。特に、一番の強みである車載市場は大手もこぞって攻め込んでいる半導体業界の主戦場だ。将来重要になる「自動運転」の覇権をめぐり、各社がしのぎを削っている。
自動運転で用いられる半導体は、末端で情報を収集するセンサーなどの半導体、センサーから得た情報をアナログからデジタル信号へと変換するアナログ半導体、それらの部品を制御するマイコン、得た情報をもとに判断・命令を行うSoC(システム・オン・チップ)、AI(人工知能)など自動車全体の”脳”となるチップに大別できる。
ルネサスは「走る・止まる・曲がる」といった制御を担うマイコンで世界シェア1位を握っている。近年は、上層にあたるSoCにも注力。チップに載せるソフトウエアが充実すれば機能も高まるため、ソフトウエア開発では200以上の企業と協業を進めながら、自動運転関連の開発を加速してきた。
2017年10月には、トヨタとデンソーが2020年の実用化に向け開発中の自動運転車にルネサスのマイコンとSoCが採用されることが発表された。ルネサスは自動車向けで培ってきたノウハウと信頼性を武器に、徐々に上層へと歩みを進めてきた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら