「代替わり」こそ衰退産業を復活させる好機だ 京都市にある「街のお米屋さん」の超復活劇

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「商店・旅館・農業・伝統産業」は、コンピューターでは代替できない「人間の営み」であり、長く伝承されてきた技術や財・サービスには、次世代に残すべき「価値」があります。

事例を1つご紹介しましょう。京都市の「株式会社八代目儀兵衛」は、もともとは「お米の専門店はしもと」と称する、ごく普通の街のお米屋でした。

京都の老舗らしい屋号に改名

しかし、米の消費が年々減り続けていく状況の中、1997年に実家に戻った現社長の橋本隆志さんは、実家の事業を「ありふれた街のお米屋さん」ではなく「京都の老舗の米販売店」と再定義。「京都が家にやってくる」というコンセプトで「お米ギフトのネット通販」を立ち上げました。同時に、「八代目儀兵衛」という、京都の老舗らしい屋号に改名します。

八代目儀兵衛のお米の詰め合わせセット

橋本さんが構想した「京都の老舗米販売店が選んだお米の詰め合わせセット」という商品特性は、内祝ギフトにピッタリとはまり、ネット通販事業は急拡大しました。また2009年には、京都の祇園に「京の米料亭 八代目儀兵衛」をオープン。2013年には銀座にも店をオープンし、いずれも行列が絶えない人気店になっています。

こうして、「ありふれた街のお米屋さん」は、「ネット通販と米料亭」に業態転換し、見事に再生を果たしたのです。

「八代目儀兵衛」にはもともと、「心変えずに形を変えよ」という教えがありましたが、橋本さんが成し遂げた変革も、この教えに従ったもの、といえます。ただ、それまで続いてきた事業を再定義するには「外部の目」が必要であり、その「外部の目」がもたらされる「代替わり」は、イノベーションの絶好のチャンスになるのです。

【2019年6月21日14時50分追記】初出時、「心変えずに形を変えよ」について家訓としていましたが、事実と異なりましたので上記のように修正しました。

16の事例を研究する中で、日本を再生するためのキーコンセプトとして、「ビギナーズ・マインド」「増価主義」「地産外招」の3つを導き出しました。この3つのキーコンセプトは複合しているのですが、簡単に言えば次のような流れです。

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