「野球医学クリニック」開業した男の選手育成論 5月開業、その経緯を馬見塚尚孝医師に聞いた

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馬見塚氏は単なる治療の領域を超えた、中長期的な視点での選手のサポートもクリニックのメニューの1つだと考えている。

「例えばケガをした選手に対して、今のスポーツ医学は患部以外を動かして早期復帰させようとします。これは大切なことですが、今のジュニアの長い練習時間を考えると、いったん練習やリハビリ時間を短くして睡眠時間を増やし、身長の伸びを大きくしたほうがよいという選択肢を提案できるようになったのです。

というのも、私は思春期の選手に対する手術で競技生活の中断を余儀なくされた選手が、治療中にほかの選手より身長が大きくなる例が多々あるのをみてきました。"がつがつ練習するんじゃなくて休もうよ、そして背を伸ばそうよ"、ということです。とくに投手は絶対背が高いほうが有利ですから。

『今』ではなくて、将来のハイパフォーマンスを目標に、25歳くらいにゴール設定をしていくと、治療やサポートの方向性も変わってくるわけです。練習量に加えて、睡眠が少ないとか、栄養に偏りがあるとか。いい選手を育てるには、栄養や睡眠時間を考慮した練習設定も必要になってくるわけです」

自由診療では投げ方指導までやる

そうなると、従来の「保険医療」の範疇を超えたサポートになってくる。

「医療の領域を超えた部分は、健康保険適用外の自由診療でやろうと。自由診療になれば、3割負担が10割負担になりますが、知識と技術をしっかり与えようとすればやはりお金はかかるものです。

さらに、オンラインでのセカンドオピニオンも準備しています。四国や九州など遠隔地で治療している患者さんと、オンライン診療のシステムでやり取りをして不安を解消するサポートや、スポーツ選手に特化したセカンドオピニオンも初めてだと思います」

医師、研究者、そして野球選手、指導者、馬見塚尚孝医師は、自らの経験を無駄にすることなく組み合わせ、幅を広げていって「ベースボール&スポーツクリニック」の開業に至ったのだ。

「スポーツ分野の総合診療科は、日本ではまだ少ないのではないかと思います。野球をずっとやってきたので、野球選手を診ることが多いのですが、この経験や知識はほかの競技にも十分応用可能です」と馬見塚医師は締めくくった。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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