そして決定的な出来事が起こる。家族でハワイに旅行するためにと貯金していたお金を使い、夫がスピリチュアル修行の名目でインドへ旅立ったのだ。
「今の俺にはインド修行の方が優先順位が上だと言われました。ガンジス河に沈んできてくれないかな、と本気で願いましたね。そうすれば生命保険も下りるし、私もバツがつかずに済みます。そう思うくらい追い詰められていました」
やよいさんは、インドから帰ってきた夫に離婚の意思を告げた。「とりあえず別居しよう」という夫の提案に対し、「面倒から逃げるための別居なのか、やり直すための冷却期間なのか。逃避なら、時間が勿体ないので別れてほしい」そう迫った。本当なら家族3人で仲良く暮らしていきたい――残された、一縷(いちる)の望みだった。だが、その願いはあっけなく裏切られる。
親権を取り合うこともなく終わった調停離婚
「夫はヘラヘラしながら、それじゃあ仕方ないな、と離婚に同意したんです。で、君たち2人はこれからどうやって生活するの?と。親権の“し”の字も出なかったですよ。あんな夫でも子どもはパパが大好きだったから、その一言はさすがに刺さりました。怒りというより、圧倒的な虚しさです」
離婚に際しては、やよいさんが1人で区役所へ通い、手続きや手順を調べ上げた。そこで勧められたとおり、離婚調停を申し立てることに。
「調停の目的はただ一つ、養育費からのばっくれを防ぐことでした。調書などで記載をすれば強制執行が可能になり、会社員である彼の給与を差し押さえてもらうことができます。
調停員の前で“借金”“育児放棄”“スピリチュアル”について話しましたが、その時の彼らの渋い表情が今でも忘れられません。残念な夫で気の毒だね、っていう顔でした」
調停に遅刻してきた夫との間で取り決められたのは、親権は母親が持つことと、月額3万円の養育費の支払いだった。算定表に基づけば5万円相当になる養育費だったが、確実に支払えるのは3万円が限度だという夫の言い分をのむ形となった。何よりやよいさんは、調停が長引くことを避けたかった。
「調停はあっさり終わりましたね。調停を申し立てると離婚届も必要ないんですよ。そのまま2人でランチをして、じゃあ達者で!という感じで解散しました。私としては、やっと新しいスタートが切れると気分上々でした」
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