「MMT」や「反緊縮論」が世界を動かしている背景 「AOC、コービン」欧米左派を支える主要3潮流
また、ベーシックインカムも掲げられているが、普遍的給付金制度は、信用創造廃止派と相性がよく、左派ニューケインジアンにも提唱者がいる。
そして、政策の柱のトップに掲げられているのは「グリーン・ニューディール」である。グリーンエネルギーと持続可能技術のための投資に、欧州の所得の5%を向けると言う。そしてこうしたことのために必要な資金は、欧州の公共投資銀行が公債を発行することで賄い、中央銀行がこれを買い支えるとされている。
他方トマ・ピケティは、昨年末、欧州の120人の政治家と学者の名前を添えて「欧州民主化宣言」を出した。それは、法人税の累進課税とトップ1%の課税強化などによって、欧州を民主化する改革をしようというものである。
両者の政策は両立させるべきものと思えるが…
私見では両者はまったく両立できるし、両立させるべきものと思えるが、この両者の間で、借り入れによるのか税によるのかをめぐって論争が起こっている(詳しくは、ピケティ論考の全文を含むバルファキス側からの反論を参照)。
バルファキスは、経済停滞で貯蓄が山積みになっているときには、課税で支出するのは十分ではないという、マクロ経済拡大政策の観点からの批判を行ったのに対して、ピケティは、自分の提案は、バルファキスのものと違ってもっぱら公的支出だから税でなければならないと答えている。
この答え自体は筆者にはよく意味がわからないが、ピケティはさらに、最も本質的なこととして、自分たちの主目的は経済政策決定のシステムを民主化することだと言い、バルファキスの提案は、民主的コントロールの及ばない中央銀行の官僚に政策を委ねることになってしまうと批判している。
この批判自体は、バルファキスが、前掲書にも見られるとおり、欧州中央銀行を欧州議会の民主的コントロール下に置こうとしていることからすると明らかに的を外している。
しかし、バルファキス側に立って反論している盟友のガルブレイスやステュアート・ホランドはむしろ、ピケティの言うとおりに税制やEUの制度を変えるには国家間調整の手間がかかるが、自分たちの提案はすぐにできるという点を強調している(ピケティvsバルファキスの論争の存在については、田中宏氏より教示を受けた)。
最後に、サンダースとバルファキスが昨年末、反緊縮の国際組織「プログレッシブ・インターナショナル」を立ち上げたことを記しておこう。
日本からもこの呼びかけに応える勢力が現れることが期待される。
(以上の文章は、拙稿「反緊縮のマクロ経済政策諸理論とその総合」 <大阪市立大学『經濟學雑誌』第119巻第2号、2019年2月>第1節の部分を、一般向けの説明や後の部分の内容を入れ込むための修正をした上、その後知った新しい動きについて加筆したものである)
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