異端の経済理論「MMT」を恐れてはいけない理由 すべての経済活動は「借金から始まっている」
著書『富国と強兵 地政経済学序説』で、MMTをいち早く日本に紹介した中野剛志氏が、理論のポイントとともに解説する。
180度違う貨幣の考え方
筆者は「現代貨幣理論(MMT)」の登場を、以前、地動説や進化論のようなパラダイム・シフトになぞらえたが(アメリカで大論争の『現代貨幣理論』とは何か)、これは大げさな比喩ではない。
現代貨幣理論は、その名のとおり、「貨幣」論を起点とする経済理論であるが、この現代貨幣理論と主流派経済学とでは、貨幣の理解からして、180度違うのである。
まさに、地動説と天動説の相違と比肩できるほど、異なっているのだ。
では、ここで、現代貨幣理論が立脚する貨幣論について、ごく簡単に解説しよう。
今日、「通貨」と呼ばれるものには、「現金通貨(お札とコイン)」と「預金通貨(銀行預金)」がある。
「銀行預金」が「通貨」に含まれるのは、我々が給料の支払いや納税などのために銀行預金を利用するなど、日常生活において、事実上「通貨」として使っているからである。
ちなみに、「通貨」のうち、そのほとんどを預金通貨が占めており、現金通貨が占める割合は、ごくわずかである。
ここまでは、主流派経済学でも異論はないであろう。
問題は、通貨のほとんどを占める「銀行預金」と貸し出しとの関係である。
通俗的な見方によれば、銀行は、預金を集めて、それを貸し出しているものと思われている。
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