異端の経済理論「MMT」を恐れてはいけない理由

すべての経済活動は「借金から始まっている」

「現代貨幣理論」(MMT)をめぐって、古くて新しい「貨幣とは何か」という問題が議論されています(写真:HIT1912/PIXTA)
前編「アメリカで大論争の『現代貨幣理論』とは何か」でも解説したように、いま、アメリカでは「現代貨幣理論」(MMT)をめぐって、オカシオコルテス下院議員やサンダース大統領候補のブレーンを務めたステファニー・ケルトン教授たちと、クルーグマン、サマーズ、パウエルFRB議長たちの間で、論争が展開され、議論が沸騰している。彼らは、どのような点で考え方が異なるのだろうか。
著書『富国と強兵 地政経済学序説』で、MMTをいち早く日本に紹介した中野剛志氏が、理論のポイントとともに解説する。

180度違う貨幣の考え方

筆者は「現代貨幣理論(MMT)」の登場を、以前、地動説や進化論のようなパラダイム・シフトになぞらえたが(アメリカで大論争の『現代貨幣理論』とは何か)、これは大げさな比喩ではない。

『富国と強兵』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

現代貨幣理論は、その名のとおり、「貨幣」論を起点とする経済理論であるが、この現代貨幣理論と主流派経済学とでは、貨幣の理解からして、180度違うのである。

まさに、地動説と天動説の相違と比肩できるほど、異なっているのだ。

では、ここで、現代貨幣理論が立脚する貨幣論について、ごく簡単に解説しよう。

今日、「通貨」と呼ばれるものには、「現金通貨(お札とコイン)」と「預金通貨(銀行預金)」がある。

「銀行預金」が「通貨」に含まれるのは、我々が給料の支払いや納税などのために銀行預金を利用するなど、日常生活において、事実上「通貨」として使っているからである。

ちなみに、「通貨」のうち、そのほとんどを預金通貨が占めており、現金通貨が占める割合は、ごくわずかである。

ここまでは、主流派経済学でも異論はないであろう。

問題は、通貨のほとんどを占める「銀行預金」と貸し出しとの関係である。

通俗的な見方によれば、銀行は、預金を集めて、それを貸し出しているものと思われている。

次ページしかし、これは銀行実務の実態とは異なる
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