異端の経済理論「MMT」を恐れてはいけない理由 すべての経済活動は「借金から始まっている」

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ところが、現代貨幣理論は、財政赤字が金利を上昇させるという理論を否定するのである。

なぜ、財政赤字を増やしても、金利は上がらないのか。

その原理は、先ほどの正しい貨幣理解を踏まえれば、容易にわかるだろう。

再度確認すると、銀行の貸し出しは、預金を元手としない。反対に、貸し出しが預金を生む。

この原理は、政府の場合も同じである。

すなわち、財政赤字は、それと同額の民間貯蓄(預金)を生む。

主流派経済学が考えるように、民間貯蓄が財政赤字をファイナンスしているというわけではないのだ。

貨幣供給量は財政赤字の拡大によって増える

もう少し説明すると、こうなる。

政府が赤字財政支出をするに当たって国債を発行し、その国債を銀行が購入する場合、銀行は中央銀行に設けられた準備預金を通じて買う。この準備預金は、中央銀行が供給したものであって、銀行が集めた民間預金ではない。

そして、政府が財政支出を行うと、支出額と同額の民間預金が生まれる(すなわち、貨幣供給量が増える)のである。

貨幣供給量は、量的緩和ではなく、財政赤字の拡大によって増えるのだ。

したがって、「財政赤字によって資金が逼迫して金利が上昇する」などということは、起きようがない。

実際、日本では、過去20年にわたり、巨額の政府債務を累積し続ける中で、金利は世界最低水準で推移してきた。多くの主流派経済学者が「いずれ金利が急騰する」と予測してきたが、その予測はことごとく外れてきた。

その予測は、今後も実現することはないであろう。貨幣についての理解が、「天動説」並みに間違っているからだ。

日本で、現代貨幣理論が「極端」「過激」な主張として紹介されることが多いのも、わかるであろう。天動説を信じている者からすれば、地動説は「極端」「過激」に違いない。

しかし、その日本は、量的緩和の失敗といい、巨額の財政赤字の下での低金利といい、経済学の「地動説」たる現代貨幣理論を実証(主流派経済学を反証)しているのだ。

次ページとはいえ、パラダイム・シフトは容易ではない
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