ガキっぽい情熱を克服できない経済学の実態 ノーベル学者もピケティも嘆く内輪ウケ体質
2018年、ポール・ローマーは、経済学への理論的貢献を認められて、ノーベル経済学賞を受賞した。
ところが、皮肉なことに、そのローマーは、2016年の講演の中で、マクロ経済学は、過去30年以上にわたって進歩するどころか、むしろ退歩したと断じ、経済学に対する辛辣な批判を展開していたのである(参考)。
しかし、このように経済学のあり方を批判する大物経済学者は、ローマーだけではない。
2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンもまた、その受賞の翌年、過去30年間のマクロ経済学の大部分は、「良くて華々しく役に立たなく、悪くて全く有害」と言い放っていた(参考)。
同様に、2011年、元米財務長官で大統領首席経済顧問やハーバード大学学長を歴任したローレンス・サマーズは、主流派経済学の理論モデルに基づく論文は、政策担当者にとっては本質的に無益であったと告白している(参考)。
本物の女王に権威を失墜させられた「社会科学の女王」
経済学批判の歴史は長い。もっとも、これまでの経済学批判は、もっぱら政治学、社会学あるいは歴史学など経済学以外の分野からか、マルクス主義、歴史学派、制度学派あるいはポスト・ケインジアンといった、主流派から外れた異端派経済学から発せられてきた。
しかし、過去10年、主流派経済学者たちの中からの「内部告発」が相次ぐようになったのである。その理由は、明らかに2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)の勃発にある。
有名な話であるが、リーマン・ショックの勃発から間もない2008年11月、イギリスのエリザベス女王は、経済学の世界的権威たちに「なぜだれも危機が来ることをわからなかったのでしょうか」と尋ね、彼らを絶句させたという。「社会科学の女王」を自認する経済学の権威が、本物の女王によって失墜させられた瞬間であった。
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