異端の経済理論「MMT」を恐れてはいけない理由 すべての経済活動は「借金から始まっている」
主流派経済学によれば「ベースマネーの増加→銀行の貸し出し(貨幣供給の増加)」となる。しかし、現代貨幣理論は「銀行の貸し出しの増加→ベースマネーの増加」だと言う。
このように、現代貨幣理論と主流派経済学は、まさに、地動説と天動説のように違うのだ。
もっとも、以上の貨幣供給理論それ自体は、現代貨幣理論に固有の見解というわけではない。
根本的に間違っている貨幣についての理解
例えば、イングランド銀行の季刊誌における解説 も、同様の貨幣供給理論に立って、主流派経済学の誤りを指摘している。主流派経済学の貨幣供給理論は、中央銀行が実際に行っている貨幣供給の実態に反しているというのだ。
貨幣を正しく理解しているのは、主流派経済学ではなく、現代貨幣理論のほうなのだ。
現代貨幣理論こそが、経済学における「地動説」(正しい説)と言ってよい。
科学が発達し、言論の自由が保障されている現代において、「貨幣」という経済の最も基本的な制度に関して、経済学の主流派が「天動説」のごとき間違った理論を信じているというのは、驚きである。
なお、黒田総裁率いる日本銀行は、2013年から量的緩和(準備預金の増加)を実施し、貨幣供給量を増やしてデフレを克服しようとしてきたが、結果は、周知のとおり失敗に終わっている。
失敗した理由は、貨幣について正しく理解している者には、おのずと明らかであろう。
デフレ下では、企業など借り手に資金需要が乏しい。それゆえ、銀行は貸し出しを増やすことができないので、貨幣供給量は増えないのである。
銀行の貸し出しの増加が準備預金を増やすのであって、その逆ではない以上、日銀が量的緩和をやっても、銀行の貸し出しは増えない。
黒田日銀の量的緩和政策は、経済学の「天動説」に基づく誤った政策なのだ。
さて、以上の正しい貨幣理解を踏まえたうえで、最近の現代貨幣理論をめぐる論争を見てみよう。
現代貨幣理論は、「自国通貨を発行できる政府が財政破綻を懸念する必要はない」と主張する。
これに対して、ポール・クルーグマン やローレンス・サマーズ ほか、多くの論者が、「財政赤字は、金利の上昇を招く」という批判を展開している。
日本でも、財政健全化を強く求める論者は、「財政赤字が金利を急騰させたら、政府債務の利払い負担が膨らんでしまう。子や孫の世代にツケを残してはならない」と主張している。
主流派経済学の理論は、巨額の財政赤字は資金を逼迫させ、金利を上昇させると説明しているのだ。
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