「MMT」や「反緊縮論」が世界を動かしている背景 「AOC、コービン」欧米左派を支える主要3潮流

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スペインの新興左翼政党ポデモスは、綱領でも、経済政策についての「人民の経済プロジェクト」でも、欧州中央銀行による直接の政府財政ファイナンスと、欧州中央銀行の独立性を改めて欧州議会のもとにおくことを掲げている。

欧州中銀の目標に「完全雇用」を含める、スペイン憲法の財政均衡ルールは廃止するとしている。この下で、各種社会政策の充実やベーシックインカムが提唱されている。

この経済綱領を書いたブレーン3人の共著が2013年に邦訳出版されている。『もうひとつの道はある――スペインで雇用と社会福祉を創出するための提案』(ナバロほか)である。ここではやはり同じ主張がされている。同書では、賃上げと公共投資による景気刺激が明確に志向されている。

著者たちのうち、最年長のビセンス・ナバロは、自らを「再定義されたマルクス主義」と名乗っている。

もっと若い世代のホアン・トーレス・ロペスは、マルクスにはこだわっておらず、影響を受けた経済学者として、ポジティブ・マネー派、MMTのガルブレイス、ポストケインジアンのスティーヴ・キーンらの名前をあげている。先述の本は、ATTACスペインで編集されているのだが、ロペスは自身がATTACのメンバーである。

ポデモスその後

ところが、このブレーンたちは、現在ほとんどがポデモスを離れている。ナバロもロペスもポデモスと縁を切って批判するようになった。

この背景には、ポデモスが経済政策を表に出さなくなり、フェミニズムや移民や性的少数派などの問題に大きく重心を移していることがある。

これに伴い、パブロ・イグレシアス党首の派閥以外の幹部たちの大量追放がなされ、副党首だったイニゴ・エレホンはじめ、マドリードとバルセロナの市長、マドリード、カタルーニャ、ラ・リオハ、ガリシアなどの地区組織が党を離れている。国際的にも、ヤニス・バルファキスのDiEM25との関係はなくなっている。

こうした内紛に加え、過去のベネズエラのチャベス政権からの資金提供の発覚、イグレシアスによる高級邸宅購入などのスキャンダルにより、今年4月終わりの総選挙では、ポデモスは29議席を失う大敗北を喫した(ポデモスの現状について、カルロス・ホルニャック氏より、情報提供を受けた)。

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