「MMT」や「反緊縮論」が世界を動かしている背景 「AOC、コービン」欧米左派を支える主要3潮流

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主な反緊縮政治家の背後にはこうした潮流の経済政策ブレーンがいる。

英労働党コービンの経済政策ブレーンは、党首就任までは、労働組合会議のブレーンのリチャード・マーフィだった。

彼は、MMTの財政学者で、コービンの党首選での目玉公約「人民の量的緩和」は彼の発案である。イングランド銀行の量的緩和マネーを国立投資銀行を通じて、住宅建設など公共的目的のために投資するというものである。その一方マーフィはポジティブ・マネー派とは論争している。

しかしコービンの党首就任後マーフィは遠ざけられ、労働党の経済政策助言機関である経済顧問委員会には、レンルイスや、左派ケインジアンのアン・ペティファーらが就任した。

もともと、レンルイスはマーフィの公共投資方式を批判し、中央銀行の作ったマネーを公衆に一律給付する狭義のヘリコプターマネーを提唱していた。

しかし、経済顧問委員会は、「人民の量的緩和」とは呼称しなくなったものの、彼らが作成した、2017年総選挙用の反緊縮マニフェストに掲げられた政策は、イングランド銀行の直接融資でこそないが、同行が国債を買って量的緩和を行っている下で、国家変革基金が低利で資金を借りて公共投資するスキームになっており、国債市場を間に介する形で、マーフィのアイデアを事実上具体化したものとなっている。

サンダース派の経済政策

2016年のアメリカ大統領選挙の民主党候補選びで、ヒラリー・クリントンに今一歩のところまで迫った自称「社会主義者」の最左翼候補バーニー・サンダースは、選挙キャンペーンで、5年間にわたる1兆ドルの公共投資によって、老朽化した道路、橋、鉄道、空港、公共交通システム、港湾、ダム、下水道などのインフラ整備を行い、1300万人の雇用を作り出すという公約を掲げていた。

また、若者に職を創出するためのプログラムに55億ドルを投資し、100万人の若者に雇用を生み出すとしている。

このサンダースは、2015年12月23日の『ニューヨーク・タイムズ』への寄稿の中で、アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(フェッド)が金融街の傀儡(かいらい)になっていることを批判したうえで、次のように書いている。

「最近のフェッドによる利上げ決定は、この経済システムがよこしまに操られた最新の例である。巨大銀行家やその議会でのサポーターは、この何年も我々に対して、手のつけられないインフレが今にもやってくるぞと言いつのってきた。だが、いつだってそうなったためしはなかった。

今利上げすることは、もっと労働者を雇うためにお金を借りなければならない零細企業主にとって災難である。そしてもっと多くの仕事と、もっと高い賃金を必要としているアメリカ人たちにとって災難である。概して、フェッドは失業率が4%を切るまでは利上げをすべきではない。」

つまり、金融街の利害のために金融緩和を打ち止めにするのであり、零細事業者や労働者にとっては金融緩和の継続が必要だと言っているのだ。

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