「突然キレる人」を味方につける単純明快な方法 怒る相手を「感情的」と切り捨ててはいけない
では、どうすればいいのか?
ここでするべきなのは、「何を言ったら」とは真逆のこと。つまり、
黙って、相手の話を聞く
のがベストなのです。こう言うと、「黙っていても、相手がヒートアップするばかりで、収拾がつかなくなるんじゃないの?」と考える人がいるかもしれませんが、それは逆です。
黙って聞く行為には、相手の感情を直接的になだめる効果があるのです。
著者は、一時期、弁論術の探究のために、話し方や交渉術などのビジネス書を読みあさったり、その著者に取材しに行ったりしていたことがあります。
中でも、感情的になった人間を相手にするクレーム応対については興味を持っていたのですが、そんな中、電話応対コンクールの全国大会審査委員長も務めた顧客応対技術の第一人者・恩田昭子氏から教わったのが、「消耗法」と呼ばれるテクニックです。
これは、相手の話に相槌を打ちながらひたすら聞き続け、相手の感情エネルギーを消耗させるというもの。
実際、感情的になった人間を相手に聞きに徹してみればわかりますが、たいていの人は、相槌しか打たない相手に何分も怒り続けられるものではありません。
しばらくは、相手も感情のおもむくまま同じ話を何度も繰り返しますが、そのうちエネルギーも枯渇して口数も少なくなってくるもの(心理学的な一説に、「黙っている相手に対して怒り続けられる時間は最大でも30分」という話もあるようで、「消耗法」でもその時間を目安に頑張るよう教えられます)。
そこまでくれば、相手も言いたいこともエネルギーも尽きて、こちらの話を聞くしかなくなってくるのです。その状態に持ち込んでから、改めて話をする。これが「消耗法」の手法です。それだけで話を聞いてもらうための難易度は一気に下がります。
「感情論」と切り捨てない
別の角度からも見てみましょう。
そもそも、感情的になった相手に対して「何を言ったらいいかわからない」となってしまうのは、相手についての情報が不足しているから、ということがあります。つまり、相手の考えがさっぱりわからないから、何を話していいのかわからない、という面もあるのです。
ならば、その意味でも、いったん黙って聞くべきです。
仮に感情的になっている相手であっても、「どうせ感情論だろ」などと切り捨てるのではなく、感情論なりの言い分に耳を傾け、相手が感情的になっている原因、相手の持っている意見などを探るのです。その工程を省いては、相手をなだめるための芯を食った謝罪も、的確な説得もできません。
まずは聞き手の言い分や考え方を知る。
文字にすると当たり前の考え方のようですが、これは感情的になった人間を相手にするときだけでなく、説得全般で非常に重要なことです。