二足のわらじでパラのメダル狙う研究者の戦い 車椅子「パラバドミントン」の第一人者が語る

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長島:そうなんです。その意味では、まったくの未経験者のほうがスムーズに対応できるのかもしれません。

乙武:その違いに対応できるようになるまでに、どのくらいの時間がかかりましたか?

長島:違和感を完全に払拭するまでには、おそらく3年くらいかかったように思います。どうしても、車いすではなく体でシャトルを拾いに行こうとしてしまいますからね。

実際にシャトルを打つ姿勢を再現してもらった

乙武:パラバドミントンで使う車いすは、他の競技で使うものとどう違うんですか?

長島:車輪がハの字になっていて回転しやすいのは車いすバスケのものと同じですが、パラバドミントンではシャトルを打つ際、後方に体を大きく反らすことになるため、後部に小さなキャスターが付いています。これのおかげで、重心が後ろにかかっても転ばずに済むわけです。

乙武:確かに、長島選手の試合を見ていて、ダイナミックに体を反らせて打つ様子にびっくりしました。人間の体はあそこまで後方にしなるものなのか、と。

長島:初心者の方は、転倒してしまうのではないかという恐怖感との戦いでもあります。これは練習で徐々に慣れていくしかないでしょうね。

強豪国・韓国を破るために必要なものは?

乙武:現在、世界の第一線で戦っている長島選手ですが、パラバドミントンの強豪国といえばどのあたりの国が有力なのでしょうか。

長島:車いす部門でいえば韓国と中国が1番手争いをしています。日本はその次、3番手争いをしている状況です。立位部門と違い、車いす部門はどうしても先進国が強いんですよ。

乙武:やはり技術力がものを言うということですか。さらに言えば、体育館などの練習場所や設備がしっかり整っている国が有利なのでしょうね。

長島:そうですね。そういう点でも国のカラーが出やすい競技と言えます。例えばウガンダは重度の下肢障害者が多いのに、車いす部門の選手はほとんどいないんです。これは競技用の車いすがあまり浸透していないためです。

乙武:長島選手の現在のランキングは?

長島:世界ランキングが今、8位です。上から4人はすべて韓国の選手です。

乙武:つまりその韓国勢をいかに打ち破るかが、来年のメダル獲得のカギになるのだと思いますが、そのために必要なものは何でしょう?

長島:パワーやスタミナ、メンタルなど、まだまだありとあらゆる要素を伸ばさなければ太刀打ちできないと感じています。

乙武:それでも、長島選手に対するメダルの期待は大きいですよね。プレッシャーはありますか?

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