パラ水泳の3クラスにおいて、12個の日本記録と6個のアジア記録を保持する池あいりさん。身長178センチの恵まれた体躯を生かし、ダイナミックな泳ぎを見せる期待の星は、いよいよ来年に迫る東京パラリンピックに向け、いま何を思うのか?
リオ・パラリンピックでは大きな挫折を味わい、それが一つの転機となったと語る彼女の深層を、乙武洋匡が直撃しました。
リハビリ目的で始めた水泳
乙武洋匡(以下、乙武):世の中には僕のように手足がない、傍目にもわかりやすい障害者もいれば、知的障害や聴覚障害といった、外見だけでは伝わりにくい障害者も存在します。これは今日ぜひお聞きしてみたかったことなのですが、池選手の場合は左足の膝下の麻痺ですが、すべてを障害者と一括りにされてしまいがちな現状に、戸惑うことも多いのではないですか?
池あいり(以下、池):正直、それはありますね。自分では健常者と障害者の間にいる存在なのかな、と思っています。私の左足は、小学校3年生のときに発症した滑膜肉腫の後遺症なんですが、その後に出会った友達からは、「足、ケガしてるの?」と聞かれることも多かったです。
乙武:見た目や動きからは、それが障害であるとは誰も思わないわけだ。
池:そうなんです。私もいちいち説明するのが面倒になってきて、「うん、ちょっと痛めちゃって」と適当にやり過ごすこともありますし(笑)。
乙武:そういえば、今この部屋に入って来られるときも、とくに足を引きずったりする様子は見受けられなかったですね?
池:ジャージの下に装具を着けているのですが、これがなければ歩けないんですよ。足首から先がまったく動かないので、後ろ向きに引きずって歩く形になってしまいます。よく誤解されるんですが、足首自体に何かがあるのではなく、滑膜肉腫の手術の際に太ももと神経の一部を切除したために、膝下からの麻痺でまったく感覚がなく足首から先は動かないという状態なんです。
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