5歳のときに患ったぶどう膜炎の影響で、視力を失った川村怜さん。一度はサッカー選手になる夢をあきらめたものの、大学進学後にブラインドサッカーを始めたところ、みるみる頭角を現し始めた。
ブラインドサッカーとは、その名のとおり、視覚を奪われた状態でプレーするサッカーで、パラリンピックの公式競技だ。フットサル(5人制サッカー)を基にルールが構成されており、障害の程度によって2つのカテゴリに分かれている。ゴールキーパー以外は全盲の選手がプレーするのが「ブラインドサッカー」。弱視の選手が主にプレーするのが「ロービジョンフットサル」だ。
川村さんは全盲と診断された2013年に日本代表デビューを果たすと、さっそくブラジル戦でゴールを奪う快挙で話題に。現在はキャプテンとして代表チームを率い、昨年は強豪イランとの9回目の対戦で初勝利を収めたばかり。この大会では8得点をマークしてゴールデンブーツ賞に選ばれるなど、いままさにノリにノッているアスリートの1人だ。
そんなブラインドサッカー界のエースは、来年に迫った東京パラリンピックに向け、いま何を思うのか? その近況と胸中を乙武洋匡が直撃した。
日本におけるブラインドサッカーをとりまく環境
乙武洋匡(以下、乙武):いよいよ来年、東京にパラリンピックがやってきます。ブラインドサッカーの日本代表は、いままさに上り調子と言えそうですが、普段の練習はどこで行っているんですか?
川村怜(以下、川村):ナショナルトレーニングセンターや都内の施設など、日替わりで移動しています。試合ではコートにサイドフェンスが設置されるのですが、練習のときはそうした設備のない、普通のサッカー場やフットサルコートで行っています。音が出るボールさえあれば、とりあえずどこでも練習はできるので。
乙武:そのあたり、日本と海外ではやはり練習環境は異なるのですか? できれば試合のときと同じように、フェンスを立てて練習するに越したことはないですよね。
川村:ブラジルやアルゼンチン、あるいはヨーロッパの国々は、ブラインドサッカー専用の練習場が整備されているところが多いです。とくにベルギーなどは、国を挙げてサッカー文化を育んでいるので、一般競技のクラブハウスの中に専用コートがあったりしますね。国のリーグの傘下にブラインドサッカーという競技があるんですよ。
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